蒼井優、池松壮亮がいる日本映画界に「いいなと思う」厚い信頼
俳優の池松壮亮と蒼井優が24日、渋谷ユーロスペースで行われた映画『斬、』(公開中)初日舞台あいさつに中村達也、前田隆成、塚本晋也監督と共に登壇。これまで何度も共演経験はあった池松と蒼井だが、本作で初めてじっくり芝居で対峙したといい圧倒的な存在感を絶賛しあった。
池松は「以前からよく(作品で)会う方だったのですが、これだけしっかり向き合ったのは初めてでした」と語ると、蒼井が現場にいることで、キャスト、スタッフみなが映画に向かえる空気になると存在感を絶賛。自身の演技の助けにもなったようで「ものすごく自由なせめぎあいができました」と感謝を述べる。
一方の蒼井は、池松がまだ12歳だったころ、福岡で撮影したドラマで初めて会ったと明かし「本当にまだ子供だった。あまり笑わない大人びた子だったので、いまと印象は変わらないんです」と当時を振り返る。そこから幾度かの共演を経て、今回は「じっくり」と対峙。「本当に頼もしい役者さんで、池松くんがいる日本映画界っていいなと思いました」と独特の表現で池松を評していた。
これまでも規模の大小を問わず、さまざまな作品に出演している池松だが、塚本組への参加は念願だったという。「プロットが本当に素晴らしかった。読んだ後で小躍りしたぐらい(笑)。20代でちゃんと俳優をやってきて、人よりも日本映画に絞って作品を観てきました。良いところ悪いところをしっかり見極めながら日本映画で世界と対峙してきた。そこで無力ながらも自分がやりたいなと思ったことが、この映画の吐き出すエネルギーとマッチしたんです」
スタッフ、キャストが魂を込めて作り上げた本作。塚本監督は、戦後70年を過ぎ、日本がまた戦争に向かおうとする動きに危機感を感じて制作した『野火』に寄せられた共感にホッとしたものの、それでも時代が変わっていないことに、さらなる不安を抱いているという。しかし、本作にもそうしたメッセージ性は感じられるものの「映画は芸術。そこに政治的なものを入れれば、それはプロパガンダになってしまう」とあくまで芸術として自由に作品を感じてとってほしいと強調。そして「予定調和にいかない作品で、カタルシスが得られるか得られないかというところの調和を楽しんでほしい」と意欲作である本作の魅力を語っていた。
本作は『鉄男』や『KOTOKO』『野火』などセンセーショナルな作品を世に送り出し続けている塚本監督が初めて挑む時代劇。混沌とした幕末を舞台に、「人を斬ることに苦悩する一人の侍」の苦悩や葛藤を描き出す。(磯部正和)