プリキュア音楽のこだわり!映画&テレビの違いまで語り尽くす
現在公開中の『映画HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』の生コメンタリー上映会が7日に新宿バルト9で行われ、宮本浩史監督、音楽担当の林ゆうき、神木優プロデューサーが出席。プリキュア映画の音楽製作の舞台裏を語り尽くした。
「プリキュア」15周年記念作品として制作された本作は、歴代のプリキュア55人が総出演。プリキュアの思い出を狙う強敵ミデンとの戦いを描き出す。“泣ける”プリキュア映画と話題を集めている本作だが、そんな感情を揺さぶる要因のひとつは「音楽」。この日はその「音楽へのこだわり」を70分以上にわたって語り尽くす貴重な機会とあって、会場はファンの熱気であふれていた。
本作ではキャラクターの感情の変化に合わせて音楽の曲調を転調させている、と明かす宮本監督。林も「そこは確かに難しかったけど、それが映画の一番楽しいところ。テレビの場合、僕らは曲を作るだけで、映像に音楽を付けられないんです。それは選曲とか音響監督の仕事なので。だから実際に画面に合わせて音楽を作ることができるのは映画だけなんですよ」と語ると、神木プロデューサーも「テレビは先にたくさんの楽曲を作っていただいて。そこに合った曲をつけていくという作業なんですが、こういう風に映像にピッタリ合った音楽が聴けるのは映画ならではの醍醐味ですよね」と補足する。
隅々まで計算された音響設計の数々を明かす3人のコメントに、観客も興味津々。神木プロデューサーは「子どもにとって音楽を聴くというのは体感するということ。音楽の情報がしっかりとお子さまに伝わっているので、ちょっと難しいシーンであってもちゃんと理解してもらえる。プリキュアにとって音楽は欠かせない要素なんです」と力説した。
そんな中、林が「つらかったし、楽しかったシーン」と語るのは、55人の歴代プリキュアがそれぞれの主題歌とともに続々と登場する「オープニング主題歌オーケストラメドレー」。
宮本監督と神木プロデューサーは「あくまで林さんの音楽がメインで、主題歌のメロディーは一部入っていればいい」と発注したが、「それは観客が望んでいることじゃないだろう」と思ったという林は、「むしろ(放送時)そのままのアレンジのオーケストラバージョンが来た方が、その世代で観ていた人が『キター!』となると思うんです」とこだわりを説明した。
吹奏楽調、ロック調など、キャラクターごとに異なる曲調を見事にまとめあげ、55人の見どころを次々と紹介していくこのシーンは、宮本監督も「すごいことができた」と自負する。
「このシーンは、音楽面でも映像面でも考えられないことをやった。しかも55人の(アフレコ)収録があったということでも考えられないことをやった。正直、これ以降のキャリアで同じことをやれと言われても、きっとできないと言い切れるくらい、すごいことができた」(宮本監督)
そんなシーンについて林は、「プリキュアは、(歴代作品に関わる)たくさんの方が血の涙を流しながら作ってきた結晶のような作品。そういう積み重ねがあるから最後のメドレーが爽快感があるんじゃないかと思うんです。お客さんは(当時)観てきたものがフラッシュバックするから泣けるんだと思う。たくさんの方に喜んでいただけたことは本当にうれしい」とファンからの好評ぶりに喜びをにじませる。
続けて、「これだけ大ヒットしたので、来期は音楽予算が3倍くらいになるんじゃないかと思います。そうすればより良い音楽を作ることができるし、より大ヒットにつながると思う。よろしくお願いします」とちゃめっ気たっぷりに呼びかけて会場を沸かせた。(取材・文:壬生智裕)