アップリンク吉祥寺、14日オープン!こだわりの詰まった新映画館
吉祥寺パルコの地下2階で12月14日よりオープンする映画館「アップリンク吉祥寺パルコ」(通称:アップリンク吉祥寺)の内覧会が12日に行われ、“ミニシアター・コンプレックス”のコンセプトとする施設の全容が明かされた。
同館は、数々の個性的な上映作品で知られる「アップリンク渋谷」の姉妹館。ここ数年で、1,100本を超えるまでになった劇場映画の公開本数に対応するべく、それぞれのコンセプトで設計された、異なる座席数の5スクリーンを保有。各スクリーンの座席数とイメージコンセプトは、29席(ストライプ)、52席(レインボー)、58席(ウッド)、63席(ポップ)、98席(レッド)となる。
同館をプロデュースしたアップリンク代表取締役の浅井隆氏は「最初はパルコの外に映画館を作ろうとして、パルコのエンタメ事業部と話をしていたんですが、どうせ作るならパルコの中に映画館を作ろうと。いろいろな予算や法律的なことを含めて形になったのが2年前くらいなので、足かけ3年くらいかかっているプロジェクトです。既存の大型店舗の中に映画館を作るのはいろいろな縛りがあって、それをひとつずつクリアしていきましたが、ものすごく勉強になりました」と晴れやかな表情。
14日のオープンに向けて、「音響などもまだまだ調整をしていきたい」と付け加えた浅井氏。本劇場の特徴のひとつとして、従来のラッパ状のホーンスピーカーではなく「田口音響研究所」の平面スピーカー、そしてフィレンツェに本社を置く「パワーソフト」のアンプを採用した音響が挙げられる。
田口音響研究所の田口和典氏は、平面スピーカーを手に「へこんだところから音を出すよりも、平面から音を出す方が空気中の音が伝播して、遠くまで飛ばすことができる。映画というのは、音楽だけでなく、セリフ、効果音などが聞こえてこないと感動が伝わってこない。このスピーカーだと、砂を踏みしめる音、川のせせらぎ、鈴の音、風の音などが聞き分けられる。そしてセリフの滑舌もよく聞こえるので、英語がこんなにわかりやすく心に入ってくるものなのかと思っております」と自負する。
またスクリーンは、暗幕などで四隅を覆う方式の“カットマスク”ではなく、むき出しの太鼓張りで設置されている。浅井氏は「天井高が限定されるので、少しでも高くするためにこの形にしました。20年前くらいに行った映画祭でのメインスクリーンにはカットマスクがなくて、いろんな画角の映画を映し出すのに、スクリーン横がむき出しになってもいいんだなと。カットマスクがなくても、映像世界に没入できる」と説明する。
さらにスクリーン自体も通常とは違う、生地にニット織を使用した「サウンドマット」を採用。浅井氏は「通常の映画館では(背後のスピーカーの音を出すため)スクリーンに穴が空いています。お客さまは映画を観ていても、データ的には(映写された映像のうち)6%は穴を見ていると思ってください。でもこのスクリーンは織物なのでそのサウンドホールがなく、音はちゃんと織物のすき間から出てくる。つまり100%の映像が映るスクリーンだと思ってください」と自信をのぞかせた。
オープン記念として同館では、過去5年に渡る名作150本以上を一挙に上映する特集上映「見逃した映画特集 Five Years」を実施。スクリーンで観たい映画をあらためて鑑賞するチャンスとなっている。(取材・文:壬生智裕)