高杉真宙、俳優デビューから10年「楽しい」が原動力
出演作が相次ぎ、どんなタイプの役も演じ分けることに定評のある若き実力派・高杉真宙。俳優デビューからは早くも10年だ。映画『十二人の死にたい子どもたち』(1月25日公開)も控える高杉に、デビュー当時からは想像もつかないほど演技を楽しんでいるという現在について聞いた。
本作のメガホンを取ったのは高杉にとって憧れの堤幸彦監督であり、人気作家・冲方丁による原作。さらには杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、黒島結菜、橋本環奈といった人気キャストがそろった。どんな撮影にも常に緊張感を持って挑んでいる高杉だが、今回は「何かをさぼると何か失うんじゃないか」と思うくらいに緊張し、共演者とも個人的な話はできなかったと振り返る。
物語は12人の未成年たちが集団安楽死を求めて廃病院に集まるところから始まる。12台のベッドが並ぶ薄暗い病院のホールで12人がテーブルの周りに着席し“死”に向けての選択を繰り返していく。「あそこにずっと籠っていたら気が変になるかもしれない」と高杉が思うほど、作品の世界観が出来上がっていた。集中力を保つために、ずっと1人でいたとも明かす。
そのなかで高杉は集いの主催者であり、物語の進行において欠かせないキーパーソン・サトシを演じ切った。高杉にとって役づくりとは台本を軸に完全な自分の“妄想”もふくめてキャラクターを肉付けしていく作業だという。さらりと明かしたが、「自分の想像と監督の意見とが食い違っていることももちろんあります。でも撮影の最中にシフトチェンジはあまりできないから、そのまま突き進んでいくことはありますね」というほど役にのめり込む。
そうして役と向き合うことが高杉にとって俳優業の楽しみでもあり、「家で役のことを考えている時、こうしようとか、ああしようとか、台本読みながら考えている瞬間が一番好きです」と笑う。
「僕にとってはパズルみたいなものなんです。台本にこの子(=役)のスタートがあり行き先があって、それまでにどんな風にこうなって、どうやってこのゴールにたどり着かせようっていう。そのなかでこの子はどんな性格で、声のトーンで、姿勢で、歩き方で……というのを組み合わせていく。サトシだったらサトシのパズルができた瞬間が面白くて。それを見せる瞬間ももちろん面白いんですけど、見せる瞬間の自分を想像して、うまくいった自分が想定できた時がうれしいです」
それもあってか人の感想はあまり求めていないといい、柔和な雰囲気から受ける印象とは異なる芯の強さをうかがわせる。「もちろん作品に関しての評価はうれしいですが、自分の演技への評価は人に左右されず自分で決めたいなと思っているんです。良いも悪いも半分くらいで聞いて、自分は“こう”っていうのを自分で考えていきたい。人から言われたからこうだって思うと、そこで止まっちゃう気がするんです」。
俳優デビューから10年ほどが経ち、「まさかいま自分自身が演技が楽しくてやっているようになると思っていませんでした」というほど、いまは楽しいという感覚が俳優業へのモチベーションだ。逆に言えば、始めたころは演技の楽しさを見出せず「すぐ辞めようと思っていました」と苦笑する。
「基本的に人前に出ることがそんなに好きじゃないんです。なんで人の前で演技をするのかなって、不思議で仕方なかった時期もありました。人前で泣いたり怒ったりするのは恥ずかしいですし、おかしいなって思っていました。でもいまは演技することが楽しいんですよね。やり始めたばかりのころは楽しく感じられなかったけど、人と会って変わっていく部分がたくさんありました」
変化のきっかけは2014年公開の映画『ぼんとリンちゃん』。そこで多くのことを学び、現在につながる俳優としての土台が出来上がったと感じている。そこから「もっとやりたい」と自覚が芽生え、「その熱量だけでどこまでやれるのかわからないですけど、でもいまはそれだけでやらせてもらっています」と吐露する。
最近すごく印象的なセリフを聞いたとうれしそうに明かした高杉。「出演した舞台に、小さな人間が大きな人間になるために大きなことをやらなきゃいけなくて、その大きなことをやるのにビビるのも、おじけづくのも無理ないといったセリフがあるんです。2018年はずーっと緊張している1年でした。でも、大きな人間になるためにおじけづいていたんだろうと思っていて、だから今年もおじけづく1年にしたいなって思っています」。(編集部・小山美咲)