もうめちゃくちゃだった…『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』再撮影の裏側
『スター・ウォーズ』シリーズ初のスピンオフとなった映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』。エピソード3と4の間を舞台に反乱軍と帝国軍の激闘を活写した本作は、フランチャイズの新たな可能性を切り開いたが、映画完成までの道のりは険しいものだった。ここでは、製作時に起きた映画の再撮影について振り返る。
2016年12月16日に日米同時公開された本作だが、約半年前、米ディズニーの重役たちは映画『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズ監督が手掛けた本作のファーストカットに納得せず、再撮影を命じたと Page Six などが報じて衝撃が走った。ファーストカットは『スター・ウォーズ』作品としてあるべき姿ではなかったそうで、 The Hollywood Reporter によると、本作が『スター・ウォーズ エピソードIV/新たなる希望』冒頭10分前に起こる出来事であるため、整合性を重視する必要もあったという。
軌道修正のために白羽の矢が立ったのは、『ボーン・アイデンティティー』シリーズなどの脚本家トニー・ギルロイ。トニーは週20万ドル(約2,200万円)という金額で雇われ、再撮影のためにセリフなどリライト。再撮影を主導しただけでなく、エドワーズ監督と共にポストプロダクションでも指揮を執ることになったため、支払い総額は500万ドル(約5億5,000万円)以上に膨れ上がったと伝えられている。(1ドル110円計算)
それだけに実質的な監督ともみなされることもあるトニーは昨年春、当時の現場を「状況は悲惨だった。各部門を改善していくしかなかった」とポッドキャスト番組 The Moment With Brian Koppelman で激白している。トニーは「混乱してめちゃくちゃだったが、実際には解決方法は極めて単純なことだった。これは犠牲についての映画だってこと」と“犠牲”というテーマで映画を組み直していったと明かした。
再撮影を通して、まず冒頭のシーンに変更が生じたという。具体的には、キャシアン・アンドー(ディエゴ・ルナ)がスパイと登場するシーン、惑星ジェダでボーディー・ルック(リズ・アーメッド)が彷徨うシーン、主人公ジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)が輸送車両から脱出するシーンが追加され、惑星スカリフでのクライマックスシーンも大きく変更されたと編集担当のジョン・ギルロイが Yahoo Movies UK に告白している。
ちなみにエドワーズ監督は本作公開後、エピソード8にあたる映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』にレジスタンスの兵士役でカメオ出演している。『最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督は『ローグ・ワン』にカメオ出演していることから、二人の遊び心ある演出といえそうだ。
かくして、再撮影を終えて完成した『ローグ・ワン』は、全米累計興行収入5億3,217万7,324ドル(約585億円)を記録。『スター・ウォーズ』作品として、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』に次ぐ3位という好成績を残した。さらにルーカスフィルムは、本作の前日譚(たん)となるキャシアン・アンドーが主人公のドラマシリーズ製作を発表。米ディズニーのストリーミングサービス「Disney+(ディズニー+)」で配信予定となっており、本作は紆余曲折を乗り越えてシリーズの人気作品の仲間入りを果たした。(編集部・倉本拓弥)