赤ちゃん同伴OK!?新たな視点にチャレンジする恵比寿映像祭
アートと映像の祭典・第11回恵比寿映像祭が2月8日~24日、東京・恵比寿の東京都写真美術館などで開催される。上映プログラムには、先ごろオランダで開催されたロッテルダム国際映画祭で世界初上映された草野なつか監督『王国(あるいはその家について)』のアジアプレミアのほか、バスター・キートン監督・主演『キートンの探偵学入門』(1924)を赤ちゃんの参加が可なら、作品に関することならおしゃべりもOKという環境でスペシャル上映される。
同映像祭は、日本初の写真と映像に関する総合的な専門美術館である東京都写真美術館などの主催で、2009年にスタート。毎回テーマが設けられ、今年は「トランスポジション 変わる術」。位置や道具、常識などさまざまな視点を変えることで、新たな未来を開いて行こうという狙いがあるという。
上映作品も、既存の映画制作のルールを破るような刺激に満ちている。『王国(あるいはその家について)』は、『螺旋銀河』(2014)で注目された草野監督の長編2作目。俳優が役を獲得するまでの過程をドキュメンタリーと劇を交互に紡ぎながら検証しつつ、人間の心情に迫っていく実験的な作品だ。2017年発表の64分版に新たな映像を加えて再編集し、150分に仕上げた。ロッテルダム国際映画祭では、気鋭の新人監督を対象としたブライト・フューチャー部門で上映されている。
『きみの鳥はうたえる』(2018)が第69回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に選ばれた三宅唱監督は、山口情報芸術センター(YCAM)に長期滞在し、現地の中高生と共に創り上げた青春映画『ワイルドツアー』(2018)と、iPhoneを使って撮り続けている映像日記『無言日記2018』で参戦。同時に日仏会館ギャラリーでは、YCAMと共同で現地の人たちと制作した初の映像インスタレーションの展示もあり、近年の三宅監督の精力的な活動が見て取れる。
また上映関連企画として、「こども映画教室」(代表:土肥悦子)が初参加する。小学生が対象で、乳幼児も鑑賞可のスペシャル上映企画バスター・キートン監督&主演『キートンの探偵学入門』鑑賞後に、語り合い、そして映画の1シーンを再現・撮影する対話側鑑賞ワークショップを実施し、新たな映画の楽しみ方を発見していくという。
映像祭開催期間中は、今年で3年目となる地域発信+地域連携プログラム「YEBIZO MEETS」も行われ、恵比寿周辺のギャラリーや文化施設計13か所で展示やパフォーマンスが行われ、“まちなかアート”が楽しめる。
2月15日には、東京藝術大学大学院映像研究科との連携企画としてメディア研究の桂英史と諏訪敦彦監督による「ポストドキュメンタリーをめぐって」と題したトークイベントもある。
加速度的に進化するデジタル技術の開発により映像が身近で誰もが手軽に世に作品を発表できるようになった今、改めて映像表現の多様さとその意義を考える絶好の機会となるに違いない。(取材・文:中山治美)
第11回恵比寿映像祭は2月8日~24日、東京都写真美術館などで開催