実写版「銃夢」はキャメロン映画だ!『アリータ』ロバート・ロドリゲス監督の挑戦
映画『アバター』(2009)のジェームズ・キャメロンが熱望し続けた日本のSFコミック「銃夢」の実写版がついに完成。キャメロンの意思を受け継ぎメガホンを取ったロバート・ロドリゲス監督に、製作時のプレッシャーと本作への思いを聞いた。
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漫画家・木城ゆきとの代表作「銃夢」は1990年代に連載がスタート。遠い未来を舞台に、ガリィ(英語版ではアリータ)と名付けられたサイボーグの少女が、失った記憶をたどりながら戦いに身を投じる本作を、キャメロンは当時から絶賛。「斬新で想像力に富み、最先端をいっている」と長年にわたって実写化に取り組んできた。
キャメロンが「銃夢」に取り組んでいることは、当時から映画ファンの間では有名だった。もちろん、オタク監督として知られるロドリゲス監督もその一人。「ジム(キャメロン)がキシロ(木城)の大ファンで、映画化権を取得したことを知っていたから、わざと原作を遠ざけていた。ネタバレを知りたくなかったんだ。でも、映画ができるのを永遠に待つことになるとは思わなかったよ(笑)。それがわかっていたら、漫画を読んでいたのに」
ロドリゲス監督によると、『アバター』の大ヒットで続編製作の必要に迫られたキャメロンは、2005年ごろ彼に脚本を譲渡。メガホンを託されたロドリゲス監督が下した決断は、キャメロンのようにこの映画撮ることだったという。
「僕が最も避けたかったのは、映画を観たジムが、『自分で作ればよかった。こいつにやらせるべきじゃなかった』となることだ(笑)。そうなって欲しくない。ジェームズ・キャメロン自身がこの映画を作ったかのように感じさせたかった。この作品を、彼の目で見ようとした。自分の目ではなくね」
原作や原作者に最大限のリスペクトを捧げるロドリゲス監督の姿勢は、コミックの世界観をこれでもかと再現した『シン・シティ』シリーズでも実証済み。「僕は映画化の際、できる限りオリジナルアーティストの作品を使おうとする。なぜなら、それこそが原作の世界にしっかりと根差した、その世界を形作る物だからだよ。だから、原作ファンのみんなは、この映画を通じて、漫画にあったたくさんの要素に命が吹き込まれているさまを目にできるよ。フォトリアル(写真のようにリアル)になったキシロの世界にいると感じてもらえるはずだ。とても素晴らしいよ」
ちなみに、予告編公開時から話題になったアリータの大きな目も、原作のガリィに対するリスペクトからきたものだという。「原作の外見をキープしようと思った」というロドリゲス監督は「ジムは、2005年の時点で彼女の目をああして表現するつもりだったんだけど、当時はまだ技術的に無理だった。でも今回は、アリータを、隣にいるクリストフ(・ヴァルツ)と同じくらいリアルだと感じるレベルになっているよ」と自負する。
もちろんプロデューサーを務めたキャメロンからは、ロドリゲス監督の作家性を第一に考え「君のものにして」という言葉をかけられたというが「ジムには、自分の映画は観たくない。僕は、あなたの映画をもう一本観たいんだって言ったよ」とゆずらなかったという。そうしてついに映画は完成。「最近、ジムに映画をどう思ったか尋ねたんだ」というロドリゲス監督は「素晴らしい映画だと言ってくれた(笑)。僕とジムが、一緒に作った映画だと感じてくれたみたいで、本当に気に入ってくれたのさ」と満面の笑みを浮かべた。(編集部・入倉功一)
映画『アリータ:バトル・エンジェル』は2月22日より全国公開