ディズニーが描く“不気味さ”…ティム・バートンが『ダンボ』で再現したかったもの
ディズニーアニメーションの名作『ダンボ』を実写映画化したティム・バートン監督が来日時にインタビューに応じ、ディズニーが描いてきた“不気味さ”について語った。
巨大な耳を持つ子ゾウ・ダンボと共に、アニメ版には登場しなかった人間のキャラクター・ホルト(コリン・ファレル)もメインで描くなど、50%リメイク、50%オリジナルというべき本作。バートン監督はダンボたちのサーカスを吸収する巨大テーマパーク“ドリームランド”まで新たに作り上げており、「僕はディズニーで育ったから、ある意味、自分自身の“ディズニーランド”を作るのは楽しかったよ」と満足げに笑う。
実際にセットとして組み立てられた“ドリームランド”は目を見張る美しさだが、その一角には“ナイトメア・アイランド”というおどろおどろしいエリアも。彼らしい不気味さだが、「そうだね(笑)。でもほとんどのテーマパークは不気味だ。不気味じゃないやつも、僕には不気味に思える」とバートン監督。そしてディズニーアニメーション映画自体にも、そもそもダークで不気味な要素があると切り出した。
「ディズニー映画について考える時、みんなこのことを忘れているんだと思う。僕はディズニー映画を観て育ったけど、ディズニー映画はいつでもこうしたテーマを描いていた。子供たちはディズニー映画で、死、悲しみ、喪失を初めて学んだんだ。喜びやユーモアと一緒にね。だから人々がそのことを忘れ、そうしたものは恐ろしく、子供たちに強い影響を与えすぎると考えるのはおかしいと思う。『ピノキオ』や『バンビ』なんかはとても激しいからね。世界のあらゆるものから子供たちを守ることなんてできない。僕は子供の頃、モンスター映画を観て育った。たぶん観るべきではなかったんだろうけど……。でも今の僕を見てよ、結局大丈夫だったでしょ?(笑)」
そんなバートン監督が今回の実写版『ダンボ』で再現したかったのは、そうしたちょっとダークな要素でもあった。「子供の頃の僕にディズニー映画が与えてくれたようなものを、僕も作りたかったんだ。ユーモア、悲しみ、恐ろしさ、喪失、そうしたものを混ぜ合わせたものをね。今は全てが均質化されて、そうしたものが取り除かれてしまいがちだ。でもこうした映画の数々があるから、ディズニーは今日も存在しているのだと思う」
そして本作を作る上で気に入っているのは、「オリジナル版には出てこない人間のキャラクターたちの物語が、奇妙な形でダンボの物語と相似しているところ」だったという。「みんな自分がのけ者のように感じていて、ホルト(コリン・ファレル)は腕も妻も仕事も失い、自分の子供たちにどう接すればいいのかわからずにいる。彼の子供たちも母を亡くし、自分たちがサーカスに囚われているように感じている。エヴァ(・グリーン)演じるコレットはヴァンデヴァー(マイケル・キートン)との関係に囚われている……。全てのキャラクターが、それぞれに自分は間違った場所にいると感じているんだ」と語っていた。(編集部・市川遥)
映画『ダンボ』は公開中