「きのう何食べた?」は原作に忠実 松本Pが理由明かす
よしながふみの人気漫画を西島秀俊&内野聖陽主演でドラマ化する「きのう何食べた?」(テレビ東京系・毎週金曜深夜0時12分~※テレビ大阪は翌週月曜深夜0時12分~)。原作もので問題になってくるのが、どこまでアレンジするのかということ。しかし、このドラマでは全編にわたって原作に忠実に展開していくスタンスだ。テレビ東京の松本拓プロデューサーが取材に応じ、その意図を明かした。
本作は、週刊モーニングで連載中のよしながふみの人気漫画に基づき、料理上手で几帳面な弁護士・筧史朗(西島)と、その恋人で人当たりの良い美容師・矢吹賢二(内野)の同居生活を、「食」をメインに描き出す。
松本プロデューサー(以下、松本P)が企画に着手したのは2年半ほど前。その5年程前には同局で別のプロデューサーがドラマ化を希望していたこともあった。実現するにあたり、最も困難だったのは主人公の男性カップル、史朗(通称シロさん)と賢二のキャスティングだったという。
「スタート地点から(映画配給会社の)松竹さんと一緒にやらせていただいているのですが、紆余曲折あって、1年か1年半前ぐらいから本格的に動き出した感じです。シロさんとケンジのキャスティングは、よしなが先生にもご意見をうかがいつつ進めていきました。プロデューサーの立場としても、まずこの2人が本当に納得のいくキャスティングにならない限り原作ファン、視聴者に納得してもらえる作品にはできないので。それと、こういったいわゆるバディものは、俳優さんがそれぞれ相手役が誰かというのを気にされるので、片方だけ先に決まるということはあまりないんです」
シロさん役の西島、ケンジ役の内野ともに「役を気に入って頂けた」というが、シロさんを内野が、ケンジを西島が演じる可能性もあった?「それはなかったですね。ただ、内野さんはどちらかというと今まで演じられた役柄的に硬派なイメージが強かったので意外に思う方もいるのではないかと。だからこそ、一発目のビジュアルにはとてつもない説得力をもたせたいなと思い、髪型、衣装、メガネなど原作のイメージに近づけて作ったところ、世の反応がとてもよかったのでこれは成功したなと」
原作では、対照的な性格のシロさんとケンジの掛け合い、それぞれの人間関係とともに、毎回、シロさんが安価な食材で作り上げる絶品メニューが並ぶ食卓シーンが描かれる。特別な出来事がない限り、夕食は2人でとるのが常だ。その一方で、男性カップルが抱えるシビアな問題も、さりげなく盛り込まれている。例えば、シロさんが倹約家であるのは、子を持てない老後を見据えているからでもある。
「原作を読んで整合性がとれていない、あるいは面白みに欠けるなどと感じたときにはアレンジすることもありますし、原作から大きく逸脱した方が良いときもあります。『きのう何食べた?』は、何気ない日常のお話で、物語に浮き沈みがあまりないのですが、それが持ち味というか良いところで。すごく気軽に読めるし、そこが深夜向きなんですよね。と同時に、実は深いテーマがあって、考えさせられることがある。それをライトなタッチで描く、というところも含めて原作を踏襲しました」
その、テーマの深さとはどんなことなのか。「シロさんとケンジは、先天的に持って生まれた困難さを抱えている。それは誰しも抱えているもので、ネガティブにとらえがち。だけど、僕の考えでは、そういうものって一人で抱えるのはつらいけど誰かといることで意外と解決できることがある。シロさんとケンジも、2人でいるときにはそういう問題を全部忘れているんですよね。でも、ふと思い出すときがあって。その繰り返しだと思うんです」
原作のイメージにマッチした西島&内野のキャスティングをはじめ、4月期ドラマの中でもとりわけ注目の高い本作。気になる映画化の可能性については「そういうことになればうれしいですけど、前提にしているということはないです」としている。(取材・文:編集部 石井百合子)