伊藤万理華「もう怖いものない」乃木坂46卒業後初の映画で女優への覚悟
浜辺美波、高杉真宙ら若手人気キャストが結集する『映画 賭ケグルイ』で、2017年の乃木坂46卒業後、初の映画出演を果たした伊藤万理華。彼女が演じるのは、謎の武装集団を率いる犬八十夢(いぬはち・とむ)だ。「自分の限界を突破しないとできない役だった」と振り返る伊藤が、過酷な現場を通して芽生えた“女優”への思い、さらには自身を育ててくれた乃木坂46への感謝の気持ちを語った。
河本ほむら・尚村透の大人気コミックを映像化した本作は、ギャンブルの強さで階級が決まる私立百花王学園を舞台に、謎多き転校生・蛇喰夢子(浜辺)らの壮絶なギャンブルバトルを描き出す。今年3月~4月にはMBS/TBSにてドラマ「賭ケグルイ season2」も放送され人気を博したが、伊藤が演じる犬八十夢は、手下を従えて学園の賭場を破壊する謎の劇場版オリジナルキャラクターだ。
個性的なキャラクターが続々と登場する本作だが、なかでも犬八十夢は、武装集団の頭として周りを鼓舞するように激しく叫んだり、狂気の牙を剥いたり、ひときわ印象に残る存在。しかし、どちらかというと大人しい性格の伊藤は、「声も出ないし、通らない……とにかく、大きく演じることを得意としない自分にとってはものすごい挑戦だった」と吐露。さらに、「あのハイテンションに到達するまでには、自分を振り切り、限界を突破しないと絶対にできない。難しいを通り越して不安でいっぱいになりました」と、当時の苦しい状況を振り返る。
振り切れたのは、意外にも髪をベリーショートにしてから。「本番前日に、役に合わせて髪を20cm以上切ったのですが、そこで『行くぞ!』という気合いが入りましたね。ビジュアルができていないと、自分は何もイメージがつかないので、ベリーショートにしたのは大きかった」と笑顔を見せる。
「初日は、犬八のアジトでの撮影だったのですが、ホコリっぽくて酸素が薄い中、倒れそうなぐらい叫びまくって。これでよかったのかわからなくて、頭が真っ白になりましたが、周りの反応を見て『あ、これでいいんだ』と確信してからは、自由にのびのびと演じることができました。役づくりで『髪を切る』という機会をいただいて本当に感謝です。もう怖いものなしかな? 今はどんな役でもやれそうな気持ちになっています(笑)」
乃木坂46を卒業し、本格的に女優の道を歩み始めた伊藤。才能豊かな同世代との共演は、大いに刺激になったようだ。「周りを見れば、一人で戦ってきた人ばかり。私はグループにいて、責任も全員で担っているところに甘えていた部分もありましたが、自己プロデュースも大事になってくる。より甘えがきかない世界に入ったなって実感しました。でも、それをこの年齢(23歳)で感じることができて本当によかったと思います」と言葉にも力がこもる。
その一方で、「今の自分があるのは乃木坂46のおかげ」であることも肝に命じている。「もともとクリエイティブな仕事に興味を持っていた自分に、乃木坂46はさらに拍車をかけてくれました。作るコンテンツが冒険的で面白かったし、メンバーがとにかく個性的で、そして優しかった。本当にいいグループだったんだなって、改めて思いますね。わたしの誇りです。今でもみんなの愛情を感じるし、逆にわたしもグループをずっと応援したいという思いもあって……もう家族以上の存在かな」とあふれる乃木坂愛を込めながら感謝の意を表した。
これまでは、挑戦する前から「わたしにはできない」と諦めていた自分がいたという。ところが、乃木坂46を卒業して2年目、本作での過酷な撮影を乗り越えた伊藤は、確実に変わった。「応援してくださる皆さんをびっくりさせる演技や役に挑戦したい」……女優として生きていく覚悟を決めた伊藤の表情は、まるで5月の空のように晴れやかだった。(取材・文:坂田正樹)
『映画 賭ケグルイ』は5月3日より全国公開