10年後の日本はどうなる? 新鋭監督が描く5つの未来
『万引き家族』の是枝裕和監督が総合監修を担当した映画『十年 Ten Years Japan』が現地時間4月29日、イタリアで開催中の第21回ウディネ・ファーイースト映画祭で上映された。
昨年11月より日本で公開された本作は、香港発の映画『十年』の日本版として製作されたオムニバス。是枝監督による最終ジャッジのもと、脚本のクオリティーやオリジナリティー、将来性を重視して選ばれた早川千絵、木下雄介、津野愛、藤村明世、石川慶という5人の新鋭監督たちが、それぞれの視点から10年後の日本を描いた。
そんな本作で映し出されるのは「高齢化」「AI教育」「デジタル社会」「原発」「徴兵制」という5つをテーマにしたわが国の未来。キャストには杉咲花、太賀、池脇千鶴、國村隼らが名を連ねた。新鋭監督たちが独自の目線で10年後の社会・人間を描く国際プロジェクトとして、日本のほかにタイと台湾版も製作された。
そもそもこのプロジェクトが始まったのは、ここウディネからだった。3年前に香港のオリジナル版『十年』が映画祭で上映され、作品に感銘を受けた高松美由紀プロデューサーは、そこで同作の製作陣に他の国のバージョンも作ったらどうかとアプローチ。ウディネから帰国後も連絡を取り続け、自ら日本版をプロデュースすることになった。
高松プロデューサーは「ウディネで『十年』の香港オリジナルバージョンを観て、誰が作ったのかと思ったら、すごく若かったんですよ。こんな若い子がこんな社会的な映画を作って、こんなイタリアの遠くまで来てすごいなと思って、話しかけました。『Ten Years Japan』とか『Ten Years Thailand(タイ)』とかやろうよ! って」と当時を振り返る。
さらに「香港版の『十年』が雨傘革命という、向こうで若い人たちが中国に香港が飲まれるんじゃないかってデモをしたことをきっかけに作られたっていうのを聞いて、日本は将来に対して真剣味がないっていうか、真正面から向かっている感じがしなかったんですね。オリンピックも他人事に考えているし、日本人ってそういうところがあるなって」と高松プロデューサー。
「だから、オリンピックが終わって7年後の日本って本当にどうなっているんだろうと思って、それでこれを作ろうとしたんです。普段の生活で真正面から見ていない代わりに、映画で真正面から見てやろうかなと思ったんです」と本作に込めた思いを明かした。
「令和」という新しい時代を迎えた日本。果たして10年後には、どのような未来が待っているのか。(編集部・中山雄一朗)