チャールズ・マンソンを取り巻く女性たちを描いた話題作、監督らが語る
映画『I SHOT ANDY WARHOL』『アメリカン・サイコ』でメガホンを取ったメアリー・ハロン監督が、新作『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』について、共同脚本家のグィネヴィア・ターナー、女優のハンナ・マリー、マリアンヌ・レンドンと共に、5月1日(現地時間)、ニューヨークで開催されたAOLのイベントで語った。
本作は、1969年に、映画監督ロマン・ポランスキーの妻で臨月を迎えていた女優のシャロン・テートの殺害と、スーパーマーケットのオーナー、ラビアンカ夫妻の殺害に関わったチャールズ・マンソン率いるマンソン・ファミリーのメンバー、レスリー・ヴァン・ホーテン(ハンナ)、パトリシア・クレンウィンケル(ソシー・ベーコン)、スーザン・アトキンス(マリアンヌ)ら3人の女性に焦点を当て、彼女たちが回想するかたちで、チャールズ・マンソンとの出会いから事件に関わっていく経緯を描いたもの。
チャールズ・マンソンに関しては、何度も長編映画やドキュメンタリーなどで映像化されてきたが、再び映像化しようと思った理由を脚本家のグィネヴィアはこう語る。「それは、まだ誰も女性の観点からチャールズ・マンソンのストーリーを描いたことがなかったからよ。彼女たちは共感さえできないクレイジーな人間と思われてきたけど、それぞれ選択の道があったことなど、彼女たちを個人として理解した上で、一連の状況が正しく描かれたことはなかったの」
一方、本作のアプローチ法について、ハロン監督は「わたしが当初持っていた3人の女性たちのイメージは裁判所に出廷したときのもので、モッズやヒッピーの衣装を着て、残酷な殺人の裁判には適さないほほ笑みを見せていたの。でも、実際の彼女たちは現実的な考え方もできる人たちで、それらの行動はチャールズ・マンソンに洗脳された状況下で、彼に指示されたものだったわ。だから、グィネヴィアの脚本を読んだときにわたしが興味を持ったのは、なぜ彼女たちが残酷な殺人を犯すに至ったのかという点なの。要するに、愛がベースの生活共同体にいる彼女たちが、リーダーの指示によっていかに殺人を犯してしまうようになるのか、その経緯を描きたかったのよ」と明かした。
ハンナは、レスリー・ヴァン・ホーテン役を受けた理由を「この脚本を読んだとき、レスリーというキャラクターがどういうわけか自分に適しているように思えたの。それに、自分自身の共感の限界をテストしてみて、どれだけ限界の範囲を伸ばし、この役を理解できるかにも興味があったわ。その行為は俳優としても最も重要だし、人としても重要だと思ったのよ」と語り、殺人を犯す行為には本能的についていけなくても、人が犯した行為として理解することの重要性を訴えた。
マリアンヌはスーザン・アトキンスについて「彼女はティーンエイジャーのときに母親が亡くなり、父親はアルコール依存症で、高校を中退し、若い頃から独立して生活をしていたの。チャールズ・マンソンに関わる前は、サンフランシスコのヘイト・アシュベリーに住み、悪魔教会の開祖アントン・ラヴェイのストリッパーだったこともあったわ。つまり、彼女にはかなり悲しい過去があったわけ」と解説。スーザンの口調や表現の仕方については、ハロン監督と相談ながらキャラクターを詰めていったことも明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)