池田エライザ、監督初挑戦に託した思い「女優業に還元したい」
今年3月に映画監督デビューを発表した女優の池田エライザが、『リング』シリーズの最新作『貞子』で、新たな恐怖にさらされる主人公・茉優(まゆ)を演じた。無類の怖がりを克服して本作に臨んだ池田が、スクリーミング・ヒロインを務めることの難しさと共に、メガホンを取った中田秀夫監督から学んだ指揮者の在り方、さらには監督業を含めたこれからのビジョンについて語った。
ジャパニーズホラーブームの火付け役となった『リング』(1998)の生みの親である中田監督が、『ザ・リング2』(2005)以来、14年ぶりにシリーズのメガホンを取った本作。鈴木光司のホラー小説「タイド」に基づき、心理カウンセラーとして働く茉優(池田)の周りに起こる奇妙な出来事を、SNSやインターネットなどをもりこみ、時代を反映した新たな恐怖と共に描く。
ホラー映画の第一人者である中田監督が、「新時代のスクリーミング・ヒロイン誕生」と池田を手放しで絶賛しているが、当の本人は「現場は戦いだった」と振り返る。「自分をきれいに見せたいというエゴは一切捨てて、誰も聞いたことがない、目を背けたくなるような表現にしたかった」と語る池田。いかに「エグさ」をにじませる叫びを出せるかに集中したという彼女だが、「中田監督の納得がいかないと、喉がかれるまで何度もやり直しがありました。監督自ら『ギャー!』と叫んで見本を示してくださるのですが、その迫力にどうしても勝てないんです」と苦笑い。
ただ、「ぼくらのレシピ図鑑」シリーズ第2弾で初監督に挑む池田にとって、そんな中田監督の“作品に対する熱量”は大いに刺激になったという。「映画で人を恐怖に陥れることに関して、中田監督はプロフェッショナル。最初に物語に没入していき、『茉優はこういう気持ちでしょ』ととにかく誰よりも熱く役を語るんです。その熱量に引っ張られて、現場ではスタッフ、キャストみんながついていく」と監督のリーダーとしての資質に脱帽。さらに池田は、「現場の指揮者として、つねに100パーセントの熱量を持つことは大切なこと。せめて『心の熱』だけは受け継いでいきたいです」と意欲を燃やす。
10代のころから映画製作に憧れ、自らを“裏方気質”と公言する池田。女優から監督業へとフィールドを拡げた今、気になるのはこれからの活動だが、「今回、初監督のチャンスをいただき、挑戦はさせていただいていますが、まだまだ女優としてお芝居をベースにやっていきたい」とあくまでも慎重なようだ。
「なぜなら、まだ女優として何も突き抜けたことをやれていないから。もちろん『演じることが好き』という気持ちは一貫してあるのですが、多くの方にお世話になっている女優業、一度はきちんと結果を残したいし、何かを成し遂げたい。だからこそ、監督を経験させていただき、その視点でお芝居全体を観ることで、また自分自身の演技に返ってくるんじゃないかなと。それが目的で監督に挑戦しているわけではないのですが、そういった部分に対しても期待はしていますね」と大きな目を輝かせていた。(取材・文:坂田正樹)
映画『貞子』は5月24日より全国公開