橋本愛、関東大震災描く「いだてん」に熊本への思い重ねる
女優の橋本愛が、大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK総合・日曜20時~ほか)で演じる遊女・小梅の役作りとともに、「何度台本を読んでも涙が出てくるくらい、すごく好きなシーン」だという第24回の復興運動会のシーン(6月23日放送)についての強い思いを明かした。
日本人選手が初めて参加した1912年のストックホルム大会から、1964年に東京オリンピックが実現するまでを、中村勘九郎(金栗四三役)、阿部サダヲ(田畑政治役)のダブル主演で描く本作。橋本演じる小梅は、きっぷのいい姉御肌の遊女。明治から昭和の浅草を破天荒に生き抜くが、第24回の放送では、大正末期(1923年)の関東大震災で壊滅的被害を受けた東京の人々を勇気づけるため、金栗らが提案し神宮外苑で「復興運動会」が行われる。
本シーンについて「震災から2か月くらいしか経っていない時期で、運動会でみんなの楽しい笑顔を見るのは、小梅にとっても、ご褒美みたいな気持ちだったでしょう」と思いを巡らせる橋本。演じる小梅は明るい性格ゆえ「脚本には、小梅がみんなを元気づけるような強い姿が描かれています。でももちろん小梅も当事者で、みんなと同じように傷ついている。震災をうけ小梅たちがどのくらい苦しい生活をしているのか、(演技から)想像していただけたら」と小梅が秘めた葛藤を強調する。
橋本は、行定勲監督が故郷である熊本出身の俳優たちを起用した中編映画『うつくしいひと』(2016)に出演。2016年4月14日に起きた熊本地震を受け、本作がチャリティー上映されたことも話題になったが「震災復興」という観点で、重なる思いはあったのだろうか。
「わたしは震災を経験した当事者ではないのですが、家族から話を聞きました。地震に遭ったときどういう気持ちだったか、どれどけ大変だったのかという話を思い出し、小梅の経験に重ねていきました」と答え、第24回に登場する印象深いシーンを挙げた。
「震災後のバラックでの、孝蔵(森山未來)と清さん(峯田和伸)、小梅の3人が語らう夜のシーンがあるんです。わたしたちが実際にできることは小さいし少ないですが、そのシーンでは、思いを馳せる、心を寄せるということが、実際に成し得た気がして、あの時間は本物だったと信じられる後味がありました。ろうそくの灯一本で話をするんですが、気を抜いたら泣いてしまいそうで」
なお小梅は、実は江戸っ子ではなく、熊本県阿蘇出身の設定。橋本は、小梅のバックグラウンドについて「地方から東京に出てきた人のコンプレックスや期待感、東京という場所への特別な思いが、小梅の行動に根付いている気がします。自分が理想としている江戸っ子に、自分を当てはめている感じがするんです」と分析する。
その一方で「わたしも、普段は小梅みたいに友人に暴言を吐けるような性格ではないのですが、自分をさらけ出して人間関係を築ける強さ、優しさ、明るさを、いつも小梅からもらっています。小梅が着ている華やかな衣装もそうですが、知らず知らずのうちに、わたしの方が影響を受けている感じがしますね」と小梅と自身の強い結びつきをうかがわせた。(取材・文/岸田智)