渡辺謙、ジャニー喜多川社長を悼む「ご一緒してみたかった」
俳優の渡辺謙が10日、東急シアターオーブにて行われたミュージカル「王様と私」の囲み取材に出席し、昨日、解離性脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血のため死去したジャニー喜多川社長へ追悼のコメントを寄せた。囲み取材には共演者のケリー・オハラ、演出を務めるバートレット・シャーも出席した。
日本のエンタメシーンに留まらず、海外でも活躍する渡辺。ジャニー喜多川氏の訃報について「全然お会いしたことはないのですが……」と語り出すと「日本のエンターテインメントの世界で、海外の空気をいち早く日本に輸入された方という認識でした。革新的な、時代を先取りするプロデュース能力はすごいと感じていたので、ご一緒してお話をしてみたかった。同じエンタメ業界にいる人間として、思いを継ぎながら、いろいろな形で(エンタメ業界を)底上げしていきたいです」と思いを馳せた。
リチャード・ロジャース(作曲)とオスカー・ハマースタイン二世(作詞)のコンビが手掛けた「王様と私」は、1860年代のシャム(現在のタイ)を舞台に、王室の家庭教師としてやってきた英国人アンナと王様の交流を描いた作品。1951年に初演されると、翌年には米演劇界最高の栄誉であるトニー賞でミュージカル作品賞を受賞。その後もリバイバル上演が行われ、2015年にはブロードウェイで渡辺謙&ケリー・オハラで再演。2018年にはイギリス・ウエストエンドでも上演され好評を博し、ついに日本公演が実現した。
渡辺は「日本公演の話が出たとき、絶対的な条件はケリー・オハラを日本のお客さまに見せたいということだった」と熱い思を話すと、今回ケリーらと共に「王様と私」を上演できることに「ニューヨーク、ロンドンと形を変えながら深めてきた舞台を、ケリーと共に日本のお客さまに届けられることは誇りです」と胸を張った。
トニー賞でミュージカル主演女優賞を受賞し“ブロードウェイの女王”とも呼ばれるケリーは「わたしも母国で舞台が上演されることは誇りなので、渡辺さんの母国である日本にこうしてやってこられたことが嬉しい。期待に応えられるようにしっかり演じたい」と意気込む。
長年、舞台を共にしてきただけに渡辺、ケリーのコンビネーションは「最高」だと口をそろえる。渡辺は「なにを投げてもしっかりキャッチしてくれて、こちらにいい球を返してくれる。素晴らしいシンガーであり、最も尊敬する女優さんの一人です」と絶賛すると、ケリーも「これまで数多くの王様を見ていますが、渡辺さんの王様には最もパッションを感じる。彼に負けないようにステップアップしていきたい」と抱負を語った。
ほぼチケットは完売しているというが、渡辺は「生意気な言い方になってしまうかもしれませんが、これだけのトップクラスのブロードウェイスターが日本にくることは本当に稀。それだけすごいことだとご理解いただける作品だと思います」と述べ、最初は日本の俳優が日本の舞台で英語を使うことに違和感があり「腰が引けていた」と明かしたが、ケリーら本物のスターが来日してショーを披露してくれるということが、なによりも渡辺の心を動かした理由となったと力説していた。(磯部正和)
ミュージカル「王様と私」は7月11日~8月4日まで東急シアターオーブにて上演