樹木希林さん、小津安二郎ゆかりの場所へ 遺作ドイツ映画本編映像
昨年9月に75歳で亡くなった女優・樹木希林さんの、海外デビュー作であり遺作のドイツ映画『命みじかし、恋せよ乙女』(8月16日より全国順次公開)より、樹木さんふんする旅館の女将の登場シーンを切り取った本編映像が公開された。
酒に溺れ仕事や家族を失ったカール(ゴロ・オイラー)と、彼の父親と親交があった日本人女性ユウ(入月絢)が、人生を取り戻すため旅へを繰り出すさまを描いた本作。樹木さんは、旅館「茅ヶ崎館」の女将を務めるユウの祖母を演じている。メガホンを取ったのは、『MON-ZEN もんぜん』などを手掛けたドイツ人のドーリス・デリエ監督だ。
映像は、女将(樹木)が旅館を訪れたカール(ゴロ)に館内を案内するシーンの一部を収めたもの。女将の説明を翻訳機を使って熱心に聞くカール。ドイツ語を日本語に変換する翻訳機に、女将が「日本語上手ね」とユーモアを交えながら返す姿も見られる。
神奈川県茅ケ崎市に実在する茅ヶ崎館は、巨匠・小津安二郎監督が脚本執筆のために利用していた定宿としても知られており、近年では『万引き家族』の是枝裕和監督が脚本執筆のために宿泊するという。樹木さんも、小津監督の映画『秋刀魚の味』(1962)の撮影時に、女優・杉村春子さんの付き人として旅館を訪れている。
茅ヶ崎館を訪ねた際、女将から小津監督が滞在した「二番の部屋」を案内され、庭に咲く芙蓉(フヨウ)の話を聞いたというデリエ監督。「(芙蓉は)朝は白かったのに、夜になると赤くなる、まるでお酒をたしなむ小津監督みたいだと女将が語っていたことを思い出しました。私も茅ヶ崎館でこの作品の執筆をしていましたので、その女将のエピソードを、樹木さんにセリフとして言ってもらおうと決めました」と語っている。(編集部・倉本拓弥)