劇団EXILE・小野塚勇人、諦めない力で飛躍
特撮ドラマ「仮面ライダーエグゼイド」の九条貴利矢/仮面ライダーレーザー役でブレイクを果たし、来年には所属する劇団EXILE初の全メンバー出演舞台「勇者のために鐘は鳴る」を控えるなど、俳優として確実に歩みを進めている小野塚勇人。樹林伸による同名小説を映画化した『東京ワイン会ピープル』(10月4日公開)では、挫折を味わう若手実業家役にトライした。小野塚自身、「挫折を経験しても諦めなかったことが、僕の強み」と語り、俳優という“本気”になれる道を見つけられたのは、もがいてきた時間があるからだという。
ワイン会に参加した女性・桜木紫野が、愛好家たちとの交流を通して、その魅力に気づいていく姿を描く本作。乃木坂46の松村沙友理が実写映画初主演で紫野役を務め、小野塚は紫野が惹かれていく織田一志を演じた。
今年26歳となった小野塚にとって、「IT社長という役どころは初めてです。第一線でバリバリ働いていて、社員の上に立つ社長という役。僕自身26歳になって、いただく役の幅が広がってきたように思います」と新境地となった織田役。
「やり手で『この人になら付いていきたい』と慕われるような男」と役柄の印象を語り、役づくりでは「IT業界で活躍されている方の講演会の様子を見たりして、研究しました。講演会の様子を見てもみなさんの仕事への姿勢や、時代の先を読む力などを感じたので、そういったものを織田に投影できたらいいなと思っていました」と試行錯誤したそう。
織田はワイン通でもあり、慣れた手つきでワインの栓を抜く“抜栓”のシーンもある。「大勢が集まるワイン会で抜栓するシーンもあると聞いていたので、これは練習しなければと。撮影前に実際のワイン会に参加して、そこで練習する機会をいただいて30本以上のワインを開けたと思います。家でそんなに開けたら酔っ払ってしまいますから(笑)、すごくいい機会をいただいたなと思っています。そこでの練習が自信につながりました」と楽しそうな笑顔を見せる。
劇中ではワインを通して、仲間たちが絆を育んでいく姿が描かれる。小野塚にとって「エンターテインメントを届ける」という思いでつながっているのが、劇団EXILEのメンバーだ。
「メンバーに『今回の作品でこういうことで悩んでいる』と話すと、『俺もそういうことがあった』と背中を押してもらうことがあります。家族のような存在だし、みんな役者として同じような経験をしてきているので、共感してもらえることもたくさんある。一緒に支え合っているようなところがあります」とメンバーに感謝しきりで、「うちの劇団は、みんな個性がバラバラなんですよ。何かを話していても、全然まとまりがない(笑)。でもだからこそ面白いし、それぞれの個性がガチッとハマったときに、すごく大きな力になると思う」といい仲間に恵まれている様子。
もともとはボーカリストを目指して、LDH主催のオーディションを受けた。俳優業に目覚めるまでには、挫折や葛藤があったという。
「歌のオーディションに何回か落ちて、劇団EXILEのオーディションにも落ちています。そんなとき、劇団EXILEの舞台のオーディションにやっと受かって。そこでものすごくキビしい演出家の方に出会い、3か月みっちり鍛えてもらいました。どこかで『歌手をやりたいな……』と思っていたところがあったんですが、そんなことを言っている場合ではない、本気にならずにどうすると思いました」と転機を告白。
「一度本気でやってみようと思ったら、どんどんのめり込んでいきました。『仮面ライダーエグゼイド』でも、みんなが成長していく姿を間近で見たり、お客さんも一緒に応援してくれたり、すごく温かい現場を経験させていただいた。いろいろな経験のできる仕事です」と今では役者業に魅了されている。
「小さい頃にはサッカーをやっていて、それを続けられなかったときも挫折を味わいました。うまくいかないことがあると落ち込むし、めげるけれど、それを乗り越えると、自分が成長できるんだと知ったときの喜びはすごく大きかった。諦めずに、粘りに粘ったからこそ、本気になれるものが見つかったんだと思います。粘り勝ちですね」と小野塚を前進させているのは、清々しいほどの“挫折力”。「これから、もっと役者業にハマっていくと思う」と熱く語る彼の活躍が、ますます楽しみになった。(取材・文:成田おり枝)