是枝裕和『真実』ベネチアで公式会見!カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュらとともに
第76回ベネチア国際映画祭
イタリアで開催中の第76回ベネチア国際映画祭で28日(現地時間)、同映画祭のコンペティション部門に出品されている日本とフランスの合作映画『真実』(10月11日公開)の公式会見が行われた。是枝裕和監督がカトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュらキャスト陣とともに出席し、世界中から集まった記者たちの質問に答えた。
日本人監督の映画として史上初めてベネチア映画祭のオープニング作品に選ばれた本作。会見場所に用意されたプレス席に空きはなく、立ち見や通路に座る記者たちが会場を埋めつくした。そんな中に是枝監督やドヌーヴたちが現れると拍手が巻き起こり、約1分間にわたって鳴り止むことはなかった。マイクを取った是枝監督は「まずは、このキャストと一緒につくった映画をオープニング作品に選んでいただいた映画祭の方々に感謝したいと思います」と感慨深い様子で謝意を伝えた。
脚本がまだ固まる前から、是枝監督はドヌーヴとビノシュの2人に会ってインタビューを行なったという。「女優という人生を送られている方たちの生の言葉をどのように脚本にいかしていくかという作業を、数年にわたって継続的な信頼関係の中でやっていきました」と回顧し、「その結実したものが、今回の『真実』です」と語った。
ドヌーヴも「パリ、カンヌ、日本でもインタビューや本読みなどで監督とお会いしました。このことが実りをもたらしました」と話し、「私の様々な部分をこの映画に注ぎました」とコメント。通訳を介した今回の撮影は「とてもオリジナルで複雑さがあった」としながらも「その結果を嬉しいと思っています。フラストレーションはありましたが、私たちはそれを乗り越えることができました」と自信をのぞかせた。
一方のビノシュは「是枝監督とご一緒できるのをとても楽しみにしていて、私にとってたくさんの夢が叶った作品」と微笑む。「是枝監督の映画に出演できて嬉しいのはもちろん、子どもの頃から大好きだったカトリーヌと仕事ができたことも夢のようだった。実現できると思っていなかった夢も叶いました」と充実の表情を見せた。
今作に出演し、この日の会見にも参加した子役のクレマンティーヌ・グルニエについての質問に是枝監督は「今回も台本は渡さずに『おばあちゃんの家に遊びに行った話だよ』とだけ伝えて、あとは撮影現場で口伝えでセリフを渡すというやり方をしました」と紹介。
「彼女のお芝居が大人たちのお芝居にいい風を吹かせてくれました。今日ここに並んでくださった女性たちのアンサンブルの一角を担ってくれました。感謝しています」とし、対してクレマンティーヌは「撮影の時に監督が言っていることを全部わかっていたわけではありませんでした。でも監督が私にやってほしいことを考えて、いろんな指示も受けながら、私はだんだんよくなっていったと思います」と語った。
是枝監督にとって第71回カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを獲得した『万引き家族』以来の新作長編映画となる本作は、フランス映画界屈指の大女優ファビエンヌ(ドヌーヴ)が自伝本「真実」を出版することから巻き起こる物語。ビノシュはファビエンヌの娘で脚本家のリュミールを演じ、その夫であるハンク役は『6才のボクが、大人になるまで。』のイーサン・ホーク。クレマンティーヌはリュミールとハンクの娘シャルロット役を担った。この日は出演者のリュディヴィーヌ・サニエ、マノン・クラベルの2人も会見に出席した。
会見中は我先にと手をあげる記者が後をたたず、時間による会見の終了を司会者が告げると落胆の声があがるなど、各国の記者たちを作品が魅了したことは間違いない様子だった。(編集部・海江田宗)