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草なぎ剛、演技は「大好きで大嫌い」

弾ける笑顔
弾ける笑顔 - 撮影:高野広美

 映画『台風家族』(公開中)で7年ぶりに長編映画の主演を務めた草なぎ剛が、撮影現場で改めて感じた、芝居に対する複雑な思いを吐露した。同作で草なぎが演じたのは、10年前に銀行で2,000万円を強奪したまま失踪した両親の“見せかけの”葬式をするため、妻子を連れて実家に帰省した小鉄。実は遺産相続が目的の、ドケチでセコ過ぎるクズ男、という異色のキャラクターだ。

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 草なぎは、「とにかく1円でも多く自分がもらいたい、という気持ちさえあれば演じ切れるな、と。監督がすごく優しい顔をしているので、怒られても怖くなさそうだな、と最初はちょっと舐めていた」と頭を掻く。監督は、『箱入り息子の恋』『ハルチカ』などの市井昌秀。ところが撮影に入ると仏の顔は一変。「メガネの奥の血走った眼の“圧”がスゴ過ぎて、これは必死にやらないといけない、と焦った」と苦笑する。曰く「監督の真面目な“圧”と、脂汗を掻きながら真剣に説明する人間臭さが、いい具合に作用して小鉄を作ってくれた」

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 以前は、脚本を読み込んで事前準備をしていたそうだが、「そういうアプローチに飽きちゃって。いまは、自分の解釈に執着したり、固定観念を持ったりせず、その場で感じたことを素直に出すというか、いい加減なくらいがちょうどいい。それがいまの自分に合っているスタイル」と分析する。さらに「役にのめり込み過ぎると、つまらなくなっちゃう気がして」と言葉を重ねるが、「ただ市井監督は、そうはさせてくれなかった。瞬間瞬間ガッツリ役に向き合わされましたね。でも、それもまた大事なんだな、とすごく勉強になりました」と振り返る。

 今回、改めて芝居に対して思ったことを問うと、「正直、あんまり好きじゃない。だって疲れちゃうんだもん」と衝撃の告白をする。「朝早かったり、夜遅かったり、待ち時間も長かったり。すごいプレッシャーの中で、感情を引っ張り出して泣かないととか、笑わないととか。とてもストレスが溜まるから。……でも作品が完成した時の感動は……芝居でしか得られないもので。だから、やっぱりやめられないんですよ」と自分の思いを確かめるように言葉をつなぐ。「いい作品には出たいという欲もあるし。う~ん、滅茶苦茶嫌いだけど、滅茶苦茶好き、みたいな。もう、表裏一体ですね」

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 草なぎの演じる小鉄のクズっぷりに辟易しつつ、だからこそ後半にそれが効き、最後に思いがけない感動を生む本作。草なぎも「さすが市井監督の練りに練った脚本。本当に深い映画なんですよ!」と自信を覗かせた。果たして遺産相続の行方は、なぜ両親は強盗したのか? そのお金の行方は。

 延期を経て、ようやく公開にこぎつけたが、限定公開となるのが惜しいほど、市井監督らしい笑いと涙にあふれた感動の家族ドラマだ。共演はMEGUMI中村倫也尾野真千子若葉竜也藤竜也ほか。(取材・文:折田千鶴子)

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