来日のギャスパー・ノエ、R18+指定に複雑「若い方に観てほしかった」
『カルネ』(1994)、『アレックス』(2002)などの問題作でカルト的な人気を博すギャスパー・ノエ監督が、R18+指定の映画『CLIMAX クライマックス』をひっさげ来日。本作の日本最速上映会が11日、ヒューマントラストシネマ渋谷で行われ、トークイベントでノエ監督が日本のファンに熱い思いを語った。
本作は、山奥の廃墟に集まった22人のダンサーが、幻覚剤(LSD)入りのサングリアを飲まされたことから巻き起こる狂乱とカオスの一晩を描くもの。第71回カンヌ国際映画祭監督週間で初上映されると、反応は賛否真っ二つにわかれながら、芸術映画賞を受賞した。
東京モチーフにした映画『エンター・ザ・ボイド』を制作し、これまで度々来日するなど親日家として知られるノエ監督は、詰めかけたファンに向かって「映画を作ると、いろいろな国にプロモーションに行きますが、その国の文化に触れると、好きになる都市があります。東京は愛すべき街です」とあいさつ。さらに日本で撮影された『エンター・ザ・ボイド』に触れ「東京を舞台に、英語で作品を撮る機会があると思っていなかったので、あのときはとても嬉しかった。日本での撮影の流儀は他国とは全く違う、とても独特なものでした」と懐かしそうに振り返っていた。
新作の『CLIMAX クライマックス』は、圧倒的な映像と音楽のコラボにより、観客を楽園なのか地獄なのかわからない世界へ誘う。ノエ監督は「楽曲の選曲はわたしが行いました。テクノミュージックが何曲か使われていると思いますが、わたしは2000年以前は定期的に日本に来ていて、東京のクラブでこのジャンルの音楽に出合ったんです」と、ここでも作品に東京の影響が色濃く反映されていることを述べる。
劇中では、狂乱のダンスシーンが展開するが、ノエ監督は、ソフィア・ブテラとスエリア・ヤクーブ以外のダンサーたちは全員素人だったことを明かすと「ネット上で踊っている動画を見て、それぞれ声をかけたんです。振付に関しても、冒頭のダンスシーンは振付師が考えたものですが、それ以外のバトルダンスやセリフはすべて即興なんです」と撮影の裏側を明かす。
さらにノエ監督は、「R18+」のレイティングがついていることに触れると「自分としては若い方に観てほしかった。13歳~15歳ぐらいの思春期の子たちが観たら、いかにアルコールやドラッグが有害であることが分かると思うのですが……」とやや残念そうな表情を浮かべていた。(磯部正和)
『CLIMAX クライマックス』は11月1日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開