『ジョーカー』ホアキン・フェニックスが挑んだ狂気のメイクへのこだわり
映画『ジョーカー』(10月4日に日米同時公開)で主演を務めたホアキン・フェニックスが、ポスタービジュアルや予告編でも鮮烈な印象を残す、ジョーカーのメイクへのこだわりについて明かした。
都会の片隅で生きる男が、狂気の犯罪者ジョーカーへと変貌していくさまを追う本作。ホアキン演じる主人公アーサー・フレックは「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、ピエロメイクの大道芸人をしながら母を助け、同じアパートに住むソフィーに秘かな好意を抱いている、一見、心優しい孤独な男だ。
そんなアーサーの生業について、監督・製作を兼任し、スコット・シルバーと共同で脚本も手掛けたトッド・フィリップスは、「作品の世界観に説得力をもたせるために考えたのは“ジョーカーに変貌したあとも、なぜ彼はピエロ顔のままなのか”ということ。その化粧はどこで思いつき、何がきっかけだったのか。ひょっとしてジョーカーの前身はピエロだったのではないかとね」と明かす。
そのため本作には、随所でピエロメイクのアーサーが登場する。彼の化粧をさらにど派手にしたのがジョーカーの顔だ。もともと主演のホアキンは、「メイクは自分でやります」とフィリップス監督に伝え、自らメイクを施した写真も送っていた。しかし「“プロのメイクさんにお願いした方が良いね”と言われてしまったよ」と苦笑する。
ただ、アーサーの化粧は、その時々の目的に合わせて変化を見せる。ホアキンによると、そのなかのひとつだけ、彼自身でメイクをすることが許可されたシーンがあるという。「メイクチームは優れた仕事をしてくれたけど、何か違うと感じたんだ。アーサーは自分で化粧をするから、僕も自分でメイクの練習をしていた。その時、顔を白塗りだけした段階で撮った写真があって、それがとても狂気を感じるものだったんだ。自分でメイクすることは却下されたけど、“1シーンだけこの状態でやらせて欲しい”とトッドに頼んだよ」。
「ジョーカーは、キャラクターを定義する明確でハッキリとしたものが無い」というホアキン。「それは役者としては恐ろしいことだけど、僕にとっては、それが最もエキサイティングなことだったんだ」と捉えどころがない複雑なキャラクターだからこそ、並みならぬ情熱を傾けたことを明かす。「例えばピーター・パーカーの動機は明らかだよね。叔父さんが彼の目の前で殺され、その瞬間、彼はスパイダーマンになると決意したんだから。彼が何に対して立ち向かっているかはとても明確だ。でも、ジョーカーには明確な決め手がない。未知の領域だよ」。
かつて『ダークナイト』(2008)でジョーカーを演じ、アカデミー賞助演男優賞を受賞した故ヒース・レジャーもジョーカーのメイクにこだわりを見せていたという。ホアキンが生みだした新たなジョーカーにもすでに称賛が集まっており、作品と共にアカデミー賞受賞への期待が高まっている。(編集部・入倉功一)