『ジョーカー』階段が意味するもの 新ポスタービジュアル&ダンス映像公開
コメディアンを夢見る孤独な男が悪のカリスマとなっていくさまを描く話題作『ジョーカー』から、予告編にも登場する印象的な階段のシーンをベースに、変貌していく主人公を描いた美しい新ビジュアル「ステアケース・ポスター」と、特別映像が公開された。(以下、映画の内容にふれています)
大都会の片隅に生きる心優しい青年アーサーは、なぜジョーカーになったのか。コミックブックのキャラクターを元にしながら、現代社会への痛烈なメッセージを込めた本作は、10月4日に公開されると、本国アメリカで10月公開作として歴代最高のオープニング興行収入を記録する大ヒットスタート。同時公開された日本でも、8日までの5日間で早くも興収10億円を突破。68万人以上の動員数を記録している。
「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に大道芸人として糊口をしのぐアーサーは、本作の冒頭、くたびれた様子で長い階段を上って帰宅する。公開された「ステアケース・ポスター」ビジュアルには、この階段を上っていくアーサーが描かれており、その先では、ジョーカーが不敵な笑みを浮かべている。
監督・製作・脚本を担当したトッド・フィリップスは、この階段シーンについて「アーサーは世の中の苦労をひとりで背負うかのように“重い足取り”で歩く。ところが、後のシーンで階段を下るアーサーはまるで別人のようだ。身のこなしも、まったく違う」と語っており、ここがまさに、彼の変貌を象徴する舞台であることを明かしている。
その言葉を証明するように、特別映像には、軽快なステップでダンスをしながら階段を下るアーサーが映し出されている。彼のダンスについてフィリップス監督はまさに「ダンスはアーサーの変貌を表している」と証言。「段々とダンスが上手くなっていくのは、彼の中から“ジョーカーが出現していること”をダンスで表しているからです」と語っており、このダンスこそ、アーサーが変わったことの合図であると明かしている。
また、アーサーを演じたホアキン・フェニックスは「映画のほとんどの場面でアーサーは内向的だけれども、ようやくジョーカーになる時、歩き方さえも変わるんだ」とジョーカーへの変化について説明。撮影中、ホアキンは脚本に沿った順撮りを希望していた(しかし実現しなかった)ことを明かしているが、そのこだわりについてフィリップス監督は「ホアキンはプロセスへのこだわりがとても強いので、アーサーからジョーカーに突如として変貌することは決してありません。彼の演技は緻密な計算の上に成り立っているんです」と語っている。
本作は、第76回ベネチア国際映画祭コンペティション部門において、最高賞となる金獅子賞を受賞。ホアキンの演技にも称賛が寄せられており、本年度のアカデミー賞ノミネートが確実視されている。すでに大ヒット中の本作だが、来年にかけて、ますます映画界を騒がせる存在になりそうだ。(編集部・入倉功一)