『イエスタデイ』エド・シーランの演技がいい!本人役でもリハーサルからがっつり参加
ザ・ビートルズのいない世界を描いた映画『イエスタデイ』(公開中)のダニー・ボイル監督が電話インタビューに応じ、本人役で出演している人気シンガー・ソングライターのエド・シーランについて楽しげに語った。
ある日突然、「自分以外は誰もビートルズを知らない世界」に身を置くことになった売れないシンガー・ソングライターのジャック(ヒメーシュ・パテル)が、彼らの名曲の数々を歌ってスターダムにのし上がるさまを描いた本作。エドは、ジャックの才能(本当はビートルズの才能)にほれ込み、彼を自身のライブの前座に抜てきする“ポップスター役”を務めている。
ボイル監督は「もともとこの役はコールドプレイのクリス・マーティンのために書かれたものだったけど、彼は家庭の事情があって出演できなかった。彼はリチャード(脚本を執筆したリチャード・カーティス)の友達でね。それで同じくリチャードの友達であるエド・シーランに変えることになったんだ」と切り出し、エドとの顔合わせとなったディナーの席でのことを振り返る。
「エドがその時、僕が誰なのか知っていたとは思えない。だって彼が携帯を使って、IMDb(映画などに関するオンラインデータベース)で僕の名前を調べているところを見たんだ(笑)。それで彼は、自分が好きな映画のいくつかを僕が監督したと知った。『ザ・ビーチ』とか『28日後...』とか『トレインスポッティング』とか。うん、やっぱり彼は『トレインスポッティング』は知っていたけど、後の二つは知らなかったな。だからすごく面白かったよ(笑)」
そして本作に出演することになったエドだが、本人役といえどもリハーサルからしっかり参加している。ボイル監督は「彼は学んで、どんどん良くなっていった。もし俳優になりたいのなら、ミュージシャンとしてやったのと同等の努力をしないといけない。エドがミュージシャンとしてあんなにも素晴らしいのは、彼は子供の頃から毎日演奏しているから。演技は、ちょちょっとやってみよう! と出来るものではない。やり方をちゃんと学ばないといけない。だから彼には僕たちと一緒に1週間リハーサルをさせて、ほかの俳優たちの周りで彼らがどうやっているのかを見てもらった。ほかの俳優たち、彼らが演じるキャラクターたちのリズムというものをつかんでもらったんだ」と明かす。
「それをせずにポップスターが出演する時、大抵の場合で起こってしまうのが、彼らだけどこか全く違うところから来た人のように感じられるということ。ニセモノみたいに」と続けたボイル監督。「それで構わない映画もあるかもしれないけど、僕たちの映画では彼が主人公に対して『すごい曲だ! どうやって書いたの!?』と言うのが真実だと、観客に信じさせることが本当に重要だった。だから彼はいい役者になったんだ」と力を込めた。
実際、ジャックをスターダムに引き上げながらも、彼の才能(もちろん本当はビートルズの才能)に自分は到底かなわないと知り、そのことをジャックに告げるシーンはおかしいのと同時に胸が痛くなる。ボイル監督は「すごく切ないシーンになったよね(笑)。この映画での彼はすごくいい。とても誇りに思っている」とエドの俳優ぶりを称賛し、「あとこれも言っておかないといけないけど、彼はとてもナイスガイなんだ。生まれつきね。だから彼とはかなり長い時間を一緒に過ごしたよ。本当に見ての通りの人なんだ」と性格の良さもたたえていた。(編集部・市川遥)