『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』ワールドプレミア実施も未完成「実はまだ途中」
第32回東京国際映画祭
4日、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかで開催中の第32回東京国際映画祭・特別招待作品『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(12月20日公開)特別先行版のワールドプレミアが開催され、主人公すず役・のんをはじめ、白木リン役の岩井七世、主題歌と劇中楽曲を担当しているコトリンゴ、片渕須直監督が登壇。映画祭開幕日のレッドカーペットで片渕監督は「今日の夜に完成します」と話していたが、この日「実はまだ途中。今日観ていただいたものから数分長くなります」と最後の最後までこだわりをもって映画に臨んでいることを明かした。
本作は、2016年11月12日の公開から、1,000日以上に渡り、全国のどこかで上映が続いている『この世界の片隅に』に、およそ30分の新たな場面を追加し、主人公のすず(のん)や、その夫・周作、遊女・リン(岩井)らの心の奥底に潜む思いを丁寧に描いている。
この日の上映には「特別先行版」という文字がついていたが、片渕監督は映画を鑑賞した方に「すごく長い映画(表記は約160分)だったと思いますが、まだ途中でして、さらに数分長くなります」と映画完成への執念を垣間見せる。続けて片渕監督は「これから家に帰ってまだ作業をするのですが、長い長いすずさんの人生を、この映画を通じて感じていただければと思います」とあいさつした。
時間を空けて同一キャラクターを演じるのは初めてだというのんは、収録前は緊張していたというが、何度も原作を読み、改めてすずというキャラクターを構築していくうちに「すずさんの皮膚感が自分に蘇ってきました」と語る。また片渕監督への信頼感も変わらず強いものがあったというと「しっかりと強い気持ちで臨むことができました」と胸を張った。
片渕監督は前作との大きな違いについて「『この世界の片隅に』はすずさんとお姉さんの径子さんとの関係がどう変わっていくかによって、すずさんの進む道が示されていましたが、今回はもっと多くの人たちによってすずさんが影響を受けていることがわかります」と述べると「よりすずさんという人物が多面的になったと思います」と解説した。
より立体的なすずに声を当てることになったのんは「すごく複雑な感情が、入れ替わり立ち替わり外に出ていくので、とても難しいなと感じたのですが、片渕監督に演出をしていただくことで、これまで気づいていなかったすずさんにも出会えました。再びすずさんという役に挑むことができてよかったです」と嬉しそうな表情で語っていた。(磯部正和)