新藤兼人賞『東京干潟』『蟹の惑星』村上浩康、『メランコリック』田中征爾が飛躍ちかう
2019年度の新藤兼人賞の授賞式が6日に都内で行われ、金賞の『東京干潟』『蟹の惑星』村上浩康監督、銀賞の『メランコリック』田中征爾監督、プロデューサー賞の『新聞記者』河村光庸が出席した。
今年度の公開作品の中から将来性のある新人監督を選出して表彰する「新藤兼人賞」。今年は230作品が選考対象となり、ノミネーション監督13名の中より受賞者が決定した。
『東京干潟』と『蟹の惑星』は、オリンピックに向けて変わりゆく東京の現在を、人と自然から捉えた連作ドキュメンタリー映画。
村上監督は「偉大なる先輩の名を冠した栄誉ある賞を受賞させていただき、ありがとうございます。非常に光栄であると同時に、身が引き締まる思いです」と喜びのコメント。本作に関しては、「基本的には一人で作り、公開した」そうで、「今思うと、この二つの映画は一人じゃなければ撮れなかった」と率直な思いを吐露。
というのも、『東京干潟』は多摩川に住むホームレスの男性を取材したもので、「おじいさんのプライバシーに分け入っていくので、一対一で向き合ったからこそ心を開いて、ここまで撮らせていただいた」と説明。一方、「興行面では限界があった」と嘆くと、「苦戦しまして、映画館の方に申し訳なかった」と頭を下げた。
しかし、新藤監督が手がけるドキュメンタリー作品に感銘を受けたこともあり、「新藤監督を目指すとはおこがましくて言えないですけど、100歳でドキュメンタリーを撮った人はいないと思うので、そこを目指して頑張りたい」と尽きない意欲も燃やしていた。
『メランコリック』は閉店後に「人を殺す場所」として貸し出されている銭湯を舞台に、登場人物たちの人間模様を変幻自在な展開とサプライズ満載で描いたサスペンス・コメディーだ。
「去年10月に東京国際映画祭で初めて上映されて今日に至るまで4、5回くらい『今日がスタートラインに立てた気持ちです』みたいなことを言っていますが、また言いたくなるような感じです」と背筋を伸ばす田中監督。
同賞は「去年から『憧れがあるんだよね』と漏らしていた」そうで、それゆえに「今年は面白い映画が多かった」と思う中、「ノミネート作品のラインナップを見たときに、名前が載っただけでよかったと思い、受賞の連絡を聞いたときはビックリしました」と驚きの胸中も述べた。そして、「今回、劇場公開作品は初めてでかなり反省点もあるので、もっと面白い作品を作り上げていければと思います」とさらなる飛躍を誓った。(取材:錦怜那)