ピエロが立てこもる密室の病院…坂口健太郎『仮面病棟』撮影の舞台裏!
映画『仮面病棟』の撮影現場が昨年10月に報道陣に公開された。坂口健太郎が映画単独主演を務めた本作で監督を務めた木村ひさしが、撮影の舞台裏を明かした。
現役医師で作家の知念実希人による同名小説をもとにしたミステリー映画『仮面病棟』。ピエロの仮面をした凶悪犯が籠城した元精神科病院から脱出を試みる人々の姿が描かれる。坂口が一日だけの当直医として病院に居合わせた医師・速水、永野芽郁が傷を負った女子大生・瞳を演じ、キャストには内田理央、江口のりこ、大谷亮平、高嶋政伸などが顔を揃える。
これまでドラマ「TRICK」シリーズはじめ、最近では『任侠学園』『屍人荘の殺人』などを手掛けてきた木村監督。今回、本格的なミステリー作品に挑むことになったことについて「ドキドキ感を感じてもらえるような、ふざけなくても撮れるんだ、というのを知らしめる作品になるはずだと思います」と冗談も交えつつ期待をあおる。
そんな物語の重要な要素となるのが、凶悪犯が立てこもったために密室となった病院という空間だ。元精神科病院で、かつ身元のわからない患者も多くいる療養型病院でのある一夜という設定のため、どこか不気味な雰囲気も予感させる。そこで撮影場所のメインとして選ばれたのが、今回の撮影の直前まで実際に総合病院として使われていた複数の施設で、リアルな病院の雰囲気を感じさせつつ、そのなかにミステリー要素を支える病院内の仕掛けを据え付けた。そして、同じ建物の複数のフロアで生起した出来事のように場所ごとに撮影が行われていった。
当初、元精神科病院という設定のため、雰囲気としては八王子のとある元病院を想定したというが、実現にはいたらず。木村監督は「この物語はシチュエーションが複雑なので、病院の構造が重要です。できるかぎり実現できる病院が小倉で見つかり、原作のイメージを踏襲させるべく再現しました。階段があったところに鉄格子をつけるなど位置関係が重要になるので配置を考えながら、雰囲気も美術スタッフに汚しを入れてもらうなど作り上げました」と語る。
そのクオリティーには満足できたという木村監督。「モニターを通して見ると、満足度の高い絵面ができあがって、緊張感のある作品ができあがる手応えがあります。狭い病院で繰り広げられるサスペンスということで、設定やシチュエーションで難しさもあって、実際にキャラクターが動いたときにどう見えるのか入ってみるまで分からなかったのですが、緊迫感を保ったまま腑に落ちる感じに撮れています。坂口さんと永野さんには助けられています」と二人の演技に感謝も口にする。
今回が初の映画単独主演となる坂口について、木村監督は「こんな先生いたらいいなあ、と思うくらいの気持ちのいい方です。好青年といういい方も変ですが、あんなに出来た人間が世の中にいるんだなというくらいの好男子ですよ」とその存在感を絶賛する。坂口も演技するなかで監督と速水というキャラクターを作り上げていったと語るが、そのとき重視したのが「正義感だけをもった勧善懲悪のヒーローにはしたくない」という思いだ。
キャストとのコミュニケーションを取りながら登場人物に深みを与えつつ、原作小説にあるスピード感も映像に落としこむことも忘れない。「少し意識したのは映画『追いつめられて』を観たときの印象のようになるといいな、と。ある事実が後で判明する、謎解きの部分をおさえるという難しさもありつつ、畳み込むような疾走感を出せたかなと思っています」と自信を見せる。
ピエロの仮面を付けた凶悪犯、密室となった病院、そしてそこに隠された謎……木村監督の新境地ともいえる本格ミステリー作品をスクリーンで楽しむことができそうだ。(編集部・大内啓輔)
映画『仮面病棟』は3月6日より全国公開