『パラサイト』ポン・ジュノ、スコセッシから手紙 アカデミー賞受賞後の反響明かす
第92回アカデミー賞で韓国映画として初の作品賞を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』(公開中)の凱旋記者会見が19日、韓国・ソウル市内のホテルで行われ、ポン・ジュノ監督がオスカー受賞の心境などを語った。会見には監督のほか、ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、イ・ジョンウン、パク・ソダム、チャン・へジン、パク・ミョンフン、ハン・ジヌォン(脚本)、イ・ハジュン(プロダクションデザイナー)、ヤン・ジンモ(編集)、クァク・シネ(製作)が出席した。
ポン・ジュノ監督&ソン・ガンホ、韓国凱旋に満面の笑み!【画像】
『パラサイト 半地下の家族』は、半地下住宅に暮らす全員無職の貧しい一家の長男が、裕福な社長一家の家庭教師になったことから起きる騒動を描いた作品。アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞する快挙を成し遂げた。
会見には、日本やアメリカ、シンガポール含む500人以上のマスコミ関係者が詰めかけ、韓国はもちろん、海外での関心の高さをうかがわせた。会見冒頭で、ジュノ監督は「実は今朝方、マーティン・スコセッシ監督から手紙が来ました」と告白。手紙の内容については「個人的なことなので割愛します」としたものの、「手紙の最後に『休むのは少しだけにして、次回作を待っているファンのためにすぐに仕事にかかった方がいい』と書かれていました」と受賞スピーチ時に言葉を引用するほど尊敬する、スコセッシ監督からの手紙に興奮した様子を見せた。
オスカー受賞について、監督は「いつもそうだが、賞を狙って映画を作っているわけではありません」とバッサリ。「去年の夏からオスカーのためのキャンペーンを行ってきましたが、本作を全米で配給している会社は新生中小企業であり、メジャーのような資金力もありません。とにかく情熱をもって熱心にアピールしただけです。(受賞の)理由については僕が述べる立場ではなく、観客や評論家の皆さんが決めることです」と振り返った。
ジュノ監督と共に、アメリカでキャンペーンを行ってきたガンホは「アメリカでは多くの映画関係者と会って映画をアピールしてきましたが、他の人が自分よりも偉大であるかを知り刺激を受けました」と述懐。その一方で「授賞式のとき、私は監督の隣に座っていたので、2ショットが何度も映りましたが、よく見ると遠慮気味なのがわかります。実はカンヌのときに監督を強く抱きしめすぎて、あばら骨にひびが入ったそうです。なので、今回はあばらを避けてそっと抱きしめました」と授賞式の裏話を語った。
韓国でのポン・ジュノ監督に対する評価は映画という枠を越え、監督の地元・テグでは、ポン・ジュノ博物館を作り、銅像を建てようという盛り上がりを見せている。監督は「自分は生きている人間だし、それは死んでからにしてくれ」と固辞したことを明かし、「『パラサイト』は今日までだと考えて、これからは次回作に集中します」と早くも次回作モードに。キャスト陣も次回作への準備に備えると述べるなか、ガンホが「実は去年の1月から、13か月間映画を撮っていない。早く仕事がしたい」と口にすると、監督はすぐさま「次の撮影は決まってるくせに」とツッコミを入れていた。
アメリカでは、『パラサイト 半地下の家族』のドラマシリーズ化が進行している。先日、ドラマの主演候補が明らかになったというニュースが出たが、監督は「正式なことは何も決まっていない」と一蹴。「脚本と演出を務めるアダム・マッケイとHBO局で協議中で、すぐにドラマ制作が始まるわけではありません。『スノーピアサー』も企画からドラマ化まで5年近くかかっていますしね」と補足した。
韓国を代表する天才監督の仕事ぶりは留まることを知らず、あまりのワーカーホリックぶりに燃え尽き症候群を心配する声も。『スノーピアサー』のときにすでに燃え尽き症候群の判定を受けたというジュノ監督だが、世界は稀代の天才監督を放ってはおかない。(取材・文:土田真樹)