ゾンビウイルス元感染者への差別…パンデミック終焉後の恐怖を描く『CURED』予告編
ゾンビパンデミック終焉後の世界に広がる、本当の恐怖を描いた映画『CURED キュアード』から、社会復帰した元感染者たちの苦悩を映し出す予告編が公開された。
元ゾンビを社会は受け入れられるのか『CURED キュアード』予告編
本作の舞台は、人間を凶暴化させる新種の病原体メイズ・ウイルスのパンデミックによって大混乱に陥ったアイルランド。発生から6年後に治療法が発見され、治療効果が見られない25%の感染者は隔離施設に監禁され、治癒した75%は“回復者”として社会復帰することになる。しかし、社会では回復者を恐れる市民の抗議デモが収まらず、差別に不満を募らせた一部の回復者が過激化、報復テロを計画しはじめる。混乱の影響は、回復者の若者セナン(サム・キーリー)と、彼が身を寄せたシングルマザーの義姉アビー(エレン・ペイジ)の家族にもおよび始める。
予告編で映し出されるのは、社会では「奴らはもう人間じゃない」と差別され、私生活では人をかみ殺していた記憶に苛まれる、回復者たちの苦悩。怒りと憎しみの連鎖は彼らを引き取った家族が「人殺しを引き取った」と糾弾されるまでになり、新たな恐怖のパンデミックを招き寄せる。
脚本・監督を務めた新鋭デヴィッド・フレインは「現代の社会問題を見事に反映することのできるジャンル」としてゾンビ映画に魅せられていたという。そこから生み出されたのが「ゾンビ感染に治療法があったら」というアイデアだった。「治るという状況は、元ゾンビにとってどんなものになるだろう? 治癒しても感染していた頃の行いの記憶に悩まされるという概念は、恐ろしく、とりわけ悲痛なものだった。その思いは私の心の中で渦巻き続けた。家族は元ゾンビを受け入れるだろうか? 本当にまた人間になれるのか? 登場人物を造形し、それを基盤にして『CURED キュアード』の世界を作った」。
さらにフレイン監督は「メディアや政治家が自らの目的のため、いかに人々の恐怖心を煽るかにも興味を抱いた。その恐怖の対象が移民、宗教、ジカ熱など、いずれであっても。そうした行為は怒りと分裂の雰囲気を作り出し、どんな病気よりもはるかに有害だ。このように恐怖を誇張する行為が『CURED キュアード』の世界の基礎を築いている」と証言。本作について「恐怖についての話だ」と語っている。「感染した者の恐怖や感染する恐怖だけではない。自分の中にある恐怖、すなわちそれは恐怖に苛まれる中での自分たちの無力さによる恐怖なのだ」。(編集部・入倉功一)
映画『CURED キュアード』は3月20日より全国公開