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台湾の俳優・呉朋奉さん死去55歳『ママ、ごはんまだ?』など

映画『ママ、ごはんまだ?』のワンシーンで一青妙・窈姉妹の父親役を演じた呉朋奉さん。母親役を河合美智子さんが演じた。(映画『ママ、ごはんまだ?』のシーンより)
映画『ママ、ごはんまだ?』のワンシーンで一青妙・窈姉妹の父親役を演じた呉朋奉さん。母親役を河合美智子さんが演じた。(映画『ママ、ごはんまだ?』のシーンより)

 台湾の名優で、役者・歯科医師の一青妙のエッセイを映画化した『ママ、ごはんまだ?』(2016)で一青妙・一青窈姉妹の父・顔恵民を演じた呉朋奉ウー・ポンフォン)さんが現地時間25日、出血性脳卒中で急逝したことがわかった。呉さんの兄弟が26日に呉さんのFacebookで明かしたもので、台湾北部の新北市内の自宅のベランダで心肺停止の状態で発見されたという。享年55歳だった。

 呉さんは1964年生まれ。兵役後、印刷工場勤務を経て、1988年に劇団に入団して役者の道を歩み始める。舞台・テレビ・映画で古典から現代劇まで幅広く活躍し、2008年にはドラマ「木棉的印記」で台湾のエミー賞こと第43回電視金鐘獎でミニドラマ部門の主演男優賞を獲得。日本でも公開された映画『父の初七日』(2009)では、中国語版アカデミー賞と言われる第47回金馬奨で助演男優賞を受賞した。

 また日台の歴史を背景にした恋愛劇で、台湾で大ヒットを記録した『海角七号/君想う、国境の南』(2008)では出演だけでなく演技指導も担い、しばしば裏方として作品全体を支えており、呉さんが台湾の文化芸術に残した功績は計り知れないものがある。

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 昨年も、ドラマ「第一響槍」での演技が評価され、第54回電視金鐘獎のミニドラマ部門で主演男優賞に輝いたばかり。そして最近は、台湾の人気ロックバンド「茄子蛋(EggPlantEgg)」のミュージックビデオに出演して話題となった。まさに国民的俳優として親しまれていただけに、突然の訃報は国内外で大きな衝撃を与えている。

 『ママ、ごはんまだ?』の白羽弥仁監督は、同作の現地スタッフから一報を受けたそうで「正直、まだ動揺しています」と驚きを隠せない。同作での呉さんの起用は、映画『父の初七日』での演技に加えて、劇中で日本語を披露していたことから、日本語のセリフも問題ないのではないかと、オファーをしたそうだ。周囲からは「気難しい人」という評判を聞いていたが、実際に会ったら気難しさの微塵もなく、出演も二つ返事で快諾してくれたという。

 ただし、やはり日本語のセリフは相当苦労したそうだが、完成した作品ではその跡を全く感じさせず、知的で威厳のある父を見事に演じており、この遺伝子が一青姉妹に受け継がれているのであろうことを説得力を持って伝えている。呉さんは同作の日本ロケ終了後、金沢市内や福岡などを放浪して、滞在を楽しんでいたという。

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 白羽監督は「私と同い年享年55歳。何度かハグした時の温もりが忘れられない。ご冥福をお祈りします」と故人を偲んだ。

 また一青妙さんは自身のオフィシャルブログ「妙的日記」に27日、「さよなら、呉朋奉さん」と題して、台湾のカルチャー誌で呉さんと対談したときの写真と共に思い出をつづっている。最後に「あなたの父の演技は忘れません。私にとって、若き日の父は、あなたと今でも重なっています。心より御冥福をお祈り申し上げます」と天国の呉さんに感謝の言葉を捧げている。

 なお、東京・新宿のK's cinemaで9月に企画されている「台湾巨匠傑作選2020」では、呉さんの2012年の出演作『天龍一座がゆく』と代表作『父の初七日』が上映される予定だ。(取材・文:中山治美)

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