アップリンク浅井氏へのパワハラ訴訟に「ミニシアター・エイド基金」事務局が声明
16日、有限会社アップリンクの取締役である浅井隆氏とアップリンクを相手取り、5名の元従業員が原告となり損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。同社が「ミニシアター・エイド基金」基金の支援を受ける参加団体の一つであったことから、運営事務局は17日、声明を発表した。
アップリンクには「ミニシアター・エイド基金」の3万人に及ぶコレクター(支援者)からの支援金が一部分配されており、事務局にいくつかの問い合わせがあったという。事務局は、アップリンク元従業員の訴え、それに対しての浅井氏の謝罪文をふまえたうえで「パワハラ自体は否定されざる事実である、と私どもは認識しております。ハラスメントはいかなる理由があっても許容されるものではありません。浅井隆氏には謝罪文にある通り、『深く反省』し、『誠意をもって対応』していただきたいと考えます」とコメント。
以下の理由から当初のスケジュール通りに支援金の分配を行うこと、そのなかにアップリンクも含まれることへの理解を呼びかけている。
「まず、今回ミニシアター・エイド基金が行ったクラウドファンディングは、コロナ禍という未曾有の災害に対する緊急支援としての意味合いの強いもので、そのため私たちは少しでも多くのミニシアターに支援が行き渡るよう、審査の基準をできるだけ簡素にしました。各映画館、経営者それぞれの性質や人格については不問としております。なぜなら、こういった支援策はいわば災害時の生存をかけた『緊急避難所』であって、避難所である以上、入り口での選別は原則的に行うべきではなく、その方針は堅持すべきと考えています」
また本件を映画業界全体の問題として捉え、労働環境の改善を訴えている。
「今回、浅井隆氏が告発を受けているその種々の内容の正否については、当事者同士の話し合いに委ねざるをえませんが、ミニシアターへの支援を広く世間に対し呼びかけ続けた今だからこそ、私たち映画業界に生きる人間は自分ごととして重く受け止めなくてはなりません。ことはアップリンク、ミニシアターだけの問題だけではなく、映画業界全般の信頼と労働意識が今問われているのだと思います。改めて、決して被害を訴えた側が不利益を被ることがないよう、また今現在もアップリンクで働く社員の労働環境が守られるよう、浅井隆氏には真摯に被害者の言葉に耳を傾けることを私たちは強く望みます」
有限会社アップリンクは、1987年9月10日に設立。デレク・ジャーマン監督やアレハンドロ・ホドロフスキー監督などの作品を配給。映画製作やソフト販売のほか、劇場、レストランの経営なども行ってきた。浅井氏は「ミニシアター・エイド基金」の会見などでコロナ禍における劇場運営の危機を訴え、オンライン映画館「アップリンク・クラウド寄付込み見放題」を立ち上げ。先ごろ、コロナの影響で延期となっていたアップリンク京都がオープンした。(編集部・石井百合子)