役所広司、西川美和監督と初タッグで元殺人犯役 共演に仲野太賀、長澤まさみら
俳優の役所広司が、『ゆれる』『永い言い訳』などの西川美和監督の新作映画『すばらしき世界』(2021年春全国公開予定)で主演を務めることが8日、明らかになった。佐木隆三の実在の人物をモデルにした小説「身分帳」を原案にした物語で、役所は13年の刑期を終えた元殺人犯を演じる。彼が更生していく様子を面白おかしく番組にしようとする2人の若手テレビマンに仲野太賀、長澤まさみがふんするほか、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、安田成美らが名を連ねる。
本作は、小説の舞台を約35年後の現代に置き換え、元殺人犯・三上正夫(役所)の出所後の目まぐるしい人生を描く。まっすぐ過ぎるゆえにトラブルばかり引き起こしながらも、どこか憎めない魅力で周囲の人々とつながっていく。原作小説は、7月15日に新カバーで刊行予定。
主演の役所が西川監督の作品に出演するのはこれが初となり、以下のように撮影を振り返っている。「いつか西川監督作品に参加したいと思っていました。三上という得体のしれない男の役を頂きました。面白さと難しさを感じました。今日撮影したシーンを明日撮るシーンの手掛かりにしながら、最後までこの男はどんな人間なんだろう? と自分に問いかけていました。人生のほとんどを刑務所の中で過ごした男が出所してから見た私たちの世界は、本当にすばらしい世界なんだろうか? タイトルの『すばらしき世界』をお客様がどのように感じるのか? 楽しみです」。なお、役所は9月25日に公開を予定していた主演映画『峠 最後のサムライ』が、新型コロナウイルスの影響で延期された。
一方、西川監督にとって長編映画は2016年の『永い言い訳』以来。クリエイターとしてコロナ禍を深刻に受け止めながら、本作が完成に至った心境を明かしている。
「『身分帳』は約30年前の小説ですが、これほど『人間と世間』を面白く描いた物語が埋もれていたとは、と映画化を決意しました。人生の大半を裏社会と刑務所で過ごしてきた主人公に役所広司さんを迎え、その男のやり直しの日々を現代に置き換えました。生々しくも温かい物語性と、役所さんの凄まじい人間的魅力に引っ張られ、濃密な人間ドラマが仕上がったと思います。新型ウィルスの影響で、自由に歩き回ること、仕事を持つこと、人と触れ合いながら生きて行くこと、それらがどれほど得難いものだったかを実感する中で、ごく普通の人生を取り戻すことに四苦八苦する主人公が重なります。世界中の映画作品が息の根を止められつつある中で、完成にこぎつけられた幸運に感謝しつつ、この作品を一人でも多くの方に届ける方法を考え、『映画を観る』ことの豊かさを伝えていければと思っています」(編集部・石井百合子)