山田孝之が俳優以外の仕事をする理由
重松清による原作を映画化した『ステップ』で男手ひとつで娘を育てるごく普通のサラリーマンを演じた山田孝之が、映画プロデューサー等、俳優以外の活動をする理由について明かした。
この映画の飯塚健監督と山田孝之は『荒川アンダー ザ ブリッジ』シリーズ、ドラマ「REPLAY&DESTROY」で組んできた、いわば互いの手の内を知り尽くした仲。特に後者では山田が企画にも名を連ね、彼がつくり手としての第一歩を踏み出した作品でもある。以後の山田は『聖☆おにいさん』『ハード・コア』『デイアンドナイト』等でプロデューサー、脚本、製作総指揮とさまざまなカタチで作品づくりに関わる。それは彼が何事においても、「やってみなきゃわからないし、自分が経験すると、その人たちがどんな思いでやっているのかが理解できるから」だったと語る。
プロデューサーとして映画をつくったのはまさにそうで、「仕事をしていれば、どの業種のどのポジションであってもなんらかの不満が出てくるもの。俳優だってそうです。じゃあそうした文句を言い合って、それで終わらせていては、ただの傷のなめ合いですよね。そうではなく、改善するには自分でつくってみないと。つくる立場になれば、なぜそうした問題が起きるのか? そのしわ寄せが俳優にくる理由がわかるだろうし、わかれば改善できるかもしれない。なるほど仕方ないな……と思うかもしれないけど、それもやってみなければわからない」という。
監督もプロデューサーもつくり手側ではあるが「監督はあくまでも現場を任される人。現場に入る前と終わったあと、準備や宣伝のことも考えていろいろと調整するのはプロデューサー。だからいちばんやるべきことだと思ったプロデューサーをやったんです。俳優である自分が、俳優のためにやるべきことをやっているだけです」と続ける。
だがそうした経験を経ても、「役になったら、その人の人生を歩むだけ。そこで予算や公開規模なんて考えません」と俳優としての気構えに変化はない。この潔さ! 確かに『ステップ』でも、サラリーマンである健一をナチュラルに表現、その人物そのものとして呼吸をしているよう。すべては作品のために。彼と組みたいつくり手が増え続けるのは、その純粋さゆえかもしれない。(取材・文/浅見祥子)
映画『ステップ』は全国公開中