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戦後75年、第二次世界大戦を振り返る映画10選~洋画編~

『戦場にかける橋』より
『戦場にかける橋』より - Columbia Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 8月15日に戦後75年を迎える日本。戦争経験者も少なくなり、今後、戦争を描いた映画の果たす役割はより大きくなっていくだろう。9月11日にはローランド・エメリッヒ監督の『ミッドウェイ』も公開されるが、戦争映画を鑑賞する際には、一方向だけの視点にとらわれないようにしたい。第二次世界大戦を題材にした映画は数多くあるが、特に名作と名高い作品と話題作10本をピックアップする。(文・磯部正和)

【写真】日本軍の捕虜役のアレック・ギネス

『戦場にかける橋』(1957)

 巨匠デヴィッド・リーン監督が、第二次世界大戦下のビルマとタイの国境近くにあった捕虜収容所を舞台に、日本軍の斉藤大佐(早川雪洲)、イギリス軍のニコルソン大佐(アレック・ギネス)、アメリカ軍のシアーズ中佐(ウィリアム・ホールデン)らの対立や交流を描いた物語。戦争映画ではあるが、激しい戦闘シーンはない。しかし、登場人物の考え方や人間としてのプライド、そしてポップな「クワイ河マーチ」からの衝撃的なラストは何度観ても、戦争やそれを引き起こす人間の愚かさを痛烈に表現している、圧倒的な反戦映画だ。

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『シンドラーのリスト』(1993)

 第二次世界大戦下、ナチス・ドイツ軍のユダヤ人大量虐殺から多くの命を救った実在するドイツ人実業家オスカー・シンドラーの生涯を、スティーヴン・スピルバーグ監督が描いた作品。ホロコーストを描いた作品は数々あるが、多くのユダヤ人を救った人の話であるにもかかわらず、非常にシビアな後味を残す。それはシンドラーが、ことの顛末のあと発した「もっと救えたかもしれない」という言葉。1,200人を救ったことは偉業だが、そのことは救われなかった人々を浮かび上がらせる。これだけのことをした人でも、後悔の念にさいなまれる戦争の惨さを痛感させられる作品だ。本作は、スピルバーグ監督にとって、初めてアカデミー賞監督賞を受賞した作品となった。

『ライフ・イズ・ビューティフル』(1998)

 ロベルト・ベニーニが監督、脚本、主演を務めたヒューマンスドラマ。ユダヤ系イタリア人のグイド(ロベルト・ベニーニ)は、愛すべき妻と息子と共に、ナチス・ドイツ軍の強制収監所に連行されてしまう。悲惨な未来が待ち受けるなか、グイドは息子ジョズエに、作品タイトル通り「人生は美しい」ことを豊かな想像力を駆使し、ユーモアを交えて伝える。グイドが息子に話す言葉や行動は、すべてが嘘である。子どものころから、嘘をついてはいけないと教えられてきたが、ついてもいい嘘があるんだと感じさせてくれる。悲劇を喜劇で伝えた本作も、戦争の残酷さをよく伝えてくれている。

『プライベート・ライアン』(1998)

 第二次世界大戦中に、ある一人の兵士を戦場から救い出せという軍の命令に、さまざまな葛藤を持ちながらも任務を遂行した兵士たちを描いたスティーヴン・スピルバーグ監督の作品。本作で軍から救出命令を下されたライアン二等兵(マット・デイモン)は、3人の兄をすべて戦争で亡くし、お家存続のために帰国を命じられる。最初にこの作品を観たとき、実際にあったアメリカの政策だと知って驚いた記憶がある。なにより衝撃的だったのが、冒頭から続くノルマンディ上陸の戦闘シーンの描写。そこから本作は数々の死が描かれており、非常にしんどい映画だ。

『パール・ハーバー』(2001)

 マイケル・ベイ監督が手掛けた第二次世界大戦中の真珠湾攻撃を背景にしたロマンス映画。アメリカ軍の若きパイロットで親友同士のレイフ(ベン・アフレック)とダニー(ジョシュ・ハートネット)、そして従軍看護師イヴリン(ケイト・ベッキンセール)の恋模様が描かれる。これまで紹介した作品は、戦争の惨さや人と人が殺し合うことへの憤りを強く感じるものだったが、本作は恋愛色強め。マイケル・ベイがこんな戦争映画を作ったんだ……という意味を込めて。

『戦場のピアニスト』(2002)

 第55回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したロマン・ポランスキー監督の戦争映画。ナチス・ドイツに占領されたポーランドで生きた実在のピアニストの人生を描く。エイドリアン・ブロディふんする主人公のピアニスト・シュピルマンはピアノの才能はあるものの、いわゆる英雄でもヒーローでもない。そんな男が、ただ生き延びることのみに捉われ、街をさまよう姿は身につまされる。戦争は一方の視点で物事を見て善悪を判断できない。本作を観ると、ドイツ兵=悪、ポーランド人=迫害を受ける、という単純な構図ではないことを痛感する。

『ヒトラー ~最期の12日間~』(2004)

 独裁者アドルフ・ヒトラー率いるナチス党の最期の12日間を、『es [エス]』『レクイエム』などのオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督が映画化。必ず独裁者と冠がつくヒトラーは、ユダヤ人虐殺など、ヒトラーやナチスを描いた作品は悪として描かれることがほとんど。しかし本作のヒトラーは、善悪のベクトルを用いれば確実に悪なのだが人間ヒトラーの変化を、秘書であるユンゲの視点である意味淡々と描いている部分が非常に新鮮だ。ヒトラーを演じたブルーノ・ガンツの熱演も圧倒的。

『縞模様のパジャマの少年』(2008)

 周囲を鉄条網で覆われたベルリン郊外のユダヤ人強制収容所。その鉄条網越しに、ナチス将校を父に持つドイツ人の少年ブルーノと、縞模様のパジャマを来た少年シュムエルは友情を育んでいたが、ある日少年たちにも非情な運命が降りかかっていく。ホロコーストを題材にした作品のなかでも本作は、国も人種もまったく関係ない純粋な友情だけで繋がっている子どもの目線で描かれているだけに、強烈な虚無感が残る。戦争からは負の感情しか生まれないということを強く感じさせられる作品だ。

『フューリー』(2014)

 第二次世界大戦下のドイツで、フューリーと名付けたM4中戦車・通称シャーマンに乗り込み、300人のドイツ軍に立ち向かったアメリカ兵ウォーダディー(ブラッド・ピット)らの活躍を描く。本作の見どころは、なんといっても戦車戦。連合国軍とドイツ軍の激しい戦車バトルが展開するが、ドイツ軍が駆るティーガー戦車は、イギリス、ボービントン戦車博物館にある、世界で唯一稼動が可能な本物のティーガー戦車を使っている。これは映画史上初の試みということで、当時大きな話題になった。内容的にはやや戦争賛歌的な部分もあるが、映画的という意味ではクオリティーの高さが感じられる。

『ダンケルク』(2017)

 独創的な映像作品を世に送り出してきたクリストファー・ノーラン監督が、第二次世界大戦下のフランス北端の海辺の町ダンケルクに追い詰められた英仏40万人の兵士たちの脱出作戦を、陸海空の三方向からの視点で描いた意欲作。来日時ノーラン監督が音にこだわっていることを明かしていたが、映像を繋ぐ音楽も作品に臨場感を与え、観ている側は戦場にいるような没入感が得られる体験型映画だ。

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