西川美和監督×役所広司主演の新作、トロント映画祭に出品 公開は来年2月
『ゆれる』などの西川美和監督が、役所広司、仲野太賀、長澤まさみらと組んだ新作映画『すばらしき世界』(2021年2月11日全国公開)が、アカデミー賞の前哨戦とされるトロント国際映画祭に出品されワールドプレミア上映されることが31日、明らかになった。西川監督にとって同映画祭への出品は、『夢売るふたり』(2012)『永い言い訳』(2016)に続いて3度目となる。
カナダで毎年9月に開催される同映画祭は、北米最大の国際映画祭。これまで『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)『グリーンブック』(2018)などが最高賞にあたる観客賞を受賞し、アカデミー賞作品賞を受賞している。今年は新型コロナウイルスの影響により世界中の映画祭が規模縮小を余儀なくされ、トロント国際映画祭も長編映画50本、短編映画プログラム5本と例年の4分の1程度に絞られた。『すばらしき世界』は、その狭き門を突破した格好となった。
西川監督は、長編監督第2作の『ゆれる』(2006)が第59回カンヌ国際映画祭監督週間に出品。韓国で公開された際には6スクリーン15日間で30万人動員のヒットを記録。『永い言い訳』は、アジア各国に加えフランス、ポルトガルでも公開された。『すばらしき世界』は、「Under The Open Sky」の英題でワールドプレミア上映を予定している。
本作は、実在の人物をモデルとした直木賞作家・佐木隆三の小説「身分帳」が原案。舞台を約35年後の現代に置き換え、13年の刑期を終えた元殺人犯の主人公がさまざまな人々と交流しながら自立を目指すさまを追う。主人公の三上に役所広司。三上を番組にしようと近づくテレビ局の面々に仲野太賀、長澤まさみがふんするほか、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、安田成美らが出演する。
第45回トロント国際映画祭の開催期間は現地時間9月10日から19日まで。受賞結果は、最終日の19日に発表される。主演の役所広司、西川美和監督のコメントは下記の通り。(編集部・石井百合子)
西川美和(監督・脚本)
トロント国際映画祭には格別な思い出があります。『夢売るふたり』(2012)の上映中、ラスト20分のところで観客の目の前でフィルムが燃えたのです。映画は突然中断し、私は映写技師のところに駆け込み、スタッフは大慌てでしたが、応急処置で上映が再開されるまでの30分間、地元の映画ファンのほとんどが席を立たずに辛抱強く待っていてくれており、最後は同じ旅を終えた仲間のような拍手で迎えてもらいました。北米最大の映画祭であると同時に、市民や映画ファンと距離の近い、大好きな映画祭です。コロナの影響でたくさんの映画が人に観てもらう場を失う中で、『すばらしき世界』の招待を決断して頂いたことに、心から感謝しています。今作も、“燃えるような”上映になりますように!
役所広司(主演・三上正夫)
(第50回カンヌ国際映画祭でパルムドール(作品賞)を受賞した)『うなぎ』で初めてカンヌ国際映画祭に参加しました。その時、海外の観客と一緒に観て「こんなにも、笑ってくれるんだ!」って驚きましたが、この『すばらしき世界』にも、『うなぎ』と共通するような、ユーモアや笑えるところがあります。まっすぐ過ぎて不器用な三上と本作を、是非楽しんで頂けたらと思っています。