水川あさみ、傷つきながら芝居 監督をイラつかせた撮影を赤裸々トーク
水川あさみが20日、都内で行われた映画『滑走路』の初日舞台あいさつに浅香航大、寄川歌太、大庭功睦監督とともに登壇。女優として、ある種の覚悟を持って芝居をしているという水川は、本作に込めた思いや現場での様子を語った。
本作は、32歳で命を絶った歌人・萩原慎一郎さんが、いじめや非正規雇用といった自身の経験を下敷きにした短歌集をモチーフにしたストーリー。子供を持つ選択肢に葛藤する切り絵作家の翠(水川)、ある青年の自死の理由を調査する若手官僚・鷹野(浅香)、幼馴染を助けたことをきっかけにいじめの標的となる中学二年生の学級委員長(寄川)。それぞれ心の叫びを抱えて生きる3人の人生が、やがて交錯していくさまを描く。
先日、第45回報知映画賞において、本作と『喜劇 愛妻物語』の演技で主演女優賞、『ミッドナイトスワン』『アンダードッグ』前後編の演技で助演女優賞にノミネートされたことを祝福された水川は、「すごくうれしいです。今年は映画に深く関われた年だったので、頑張ったねと言ってもらえたような気持ちになりました。ありがとうございました」と感謝。
本作については、「すごくいい意味でグレーがかかったような、もやがかかったような素敵なバランスの映画になったんじゃないかな」と自信をのぞかせると、「繊細な演出が行き届いていて、メチャクチャ居心地が良かったです」と現場の様子も伝えた。
とはいえ、大庭監督とはすったもんだがあった様子。翠は最初、夫(水橋研二)と目を合わせない設定なのだが、大庭監督は「結構ぶつくさ言ってましたよね。(目が)合っちゃうんだけど、どうすんの? みたいに」と明かすと、水川は「(わたし)すごい面倒くさい」と失笑。
また、翠が夫をビンタする様子をワンシーンワンカットで捉えたシーンにおいて、水川が「かなりディスカッションしましたよね。いろいろ聞きすぎて、監督ちょっとイラっとしてましたよね(笑)」と思い返すと、大庭監督も「段取りで時間がかかってイライラを出しちゃった……」と素直に打ち明けた。さらに、テスト時に水川の芝居が自分の思った通りではなかったことから「そこでまたイラっとしちゃった」とぶっちゃけ。結果的に満足のいく仕上がりになったようだが、赤裸々トークに会場は笑いに包まれた。
スタッフ・キャストの熱い思いがこもった本作。水川は「この作品を観ていただいた方々がネガティブな感情になるかもしれないけど、生きていくことは人を傷つけたり、自分も傷つくこと」と持論を語ると、「わたしたちも傷つきながらお芝居をしている。ある意味で覚悟をしながら作品を作っています」と力を込めた。同時に、本作が観客にとって勇気づけられる作品になることを願っていた。(取材:錦怜那)