『銀魂 THE FINAL』の裏側!映画化やタイトルの理由、宮脇千鶴監督が明かす
アニメ「銀魂」が、2006年のテレビ放送開始から約15年、ついに映画『銀魂 THE FINAL』(公開中)で完結を迎える。スタート当初から作品に携わってきた宮脇千鶴監督は「どうにかここまでこぎ着けることできました」と安どの表情を浮かべる。15年の間、アニメ「銀魂」を支えてきた宮脇監督に制作の裏側を聞いた。
原作は、「週刊少年ジャンプ」で連載された空知英秋による大ヒット漫画。テレビアニメは2006年よりスタートし、第4期まで放送された。そして『劇場版銀魂 新訳紅桜篇』(2010)、『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』(2013)に続く映画3作目となるのがこの『銀魂 THE FINAL』だ。物語は原作漫画のラストがベースとなり、まさしくアニメ「銀魂」の集大成ともいえる一作。
最後の物語をこうしてテレビシリーズではなく映画で描くことは、制作サイドからの提案だったという。「『銀魂』の最後を描くとしたら映画しかないんじゃないかと話していたんです。テレビだとボリュームに限界があるし、物語がアクション続きというのもあり、この物量を裁くには予算的にもスケジュール的にも映画しかないだろうとオーダーを出しました」。
映画の製作が決定したものの、タイトルが決まるまでには協議が重ねられた。『劇場版銀魂 新訳紅桜篇』『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』と続いた作品のタイトルが『THE FINAL』と英語なのはどうなのか? という葛藤はあったものの「通りが良く、マスに伝わりやすい。誰でもこれが最後なんだと一発でわかるようなタイトルということで、ここに収まったように思います。(『THE FINAL』=)“最後”だったら観に行こうという気持ちになってもらえるかもしれないという期待もありました」と説明する。
ただ、アニメ「銀魂」としてのラストエピソードを描くものとして『完結篇』と銘打たれた前作に続き、今回は『THE FINAL』。「何回終わるんだという話ですよね」と苦笑する宮脇監督。「銀魂」シリーズといえば、原作・アニメ共に「最終回」「最終章」と打ち出しつつもそれ自体が長期にわたったり、その後の展開が継続したりといったことが数多く繰り返された結果として“終わる終わる詐欺”が代名詞にもなっているほど。坂田銀時役の声優・杉田智和が「“銀魂ネタ”がもはや概念化していると感じます」(シネマトゥデイインタビューより)と語るほど、世に受け入れられてもいるが、「ずっとやむなしというか……どうしようもなくこうなったんです。そういうことがネタとして昇華されていくのは有難くも不思議ですね」と率直な思いを口にする。
ただ、『完結篇』は空知が考えた“アニメの最終回を描くなら”というifの物語。「『THE FINAL』は原作のラストを映像化した作品です。構造は対のようにはなっているんです。答え合わせ的な側面も少しあるかもしれません」とも明かす。原作の印象を変えずに映画の尺に収まるよう再構成する作業は念入りに行われたといい、完成した作品からは物語の主軸となる銀時・高杉晋助・桂小太郎の3人の戦いが際立つ印象を受ける。
「『完結篇』は万事屋サイドを重点的に描いた映画でした。『THE FINAL』はそのエピソードとリンクしている部分がけっこうあり、そのまま作ると『完結篇』の焼き直しのようになってしまいそうで、それを避けたかったんです。違う視点の切り口として描けるように作ったので、今回は万事屋3人というよりは銀時が松下村塾で培ってきたものの最後の整理という方向に持っていきました」
長く続いた人気シリーズの完結。アフレコ現場では、始まりにも終わりにも特別な挨拶がなかったと声優陣が振り返っているが、「音響監督の高松信司さんはそういうのが苦手なタイプの人なんです。久しぶりの収録を始める時も挨拶はしないんですよ。普通に『じゃ始めまーす』と始める方。だから意味があって挨拶がなかったわけではなく、いつも通りにぬるっと始まり、ぬるっと終わっただけなんです。全員シャイボーイなので、改まってとか苦手なんです」と苦笑する。
宮脇監督自身は、「銀魂」第1期から作画監督として参加し、第3期からは藤田陽一から監督を引き継いだ。その時点で完結が見えており「終わらせるためのプロジェクト」という認識だったのだとか。「最初は1年で終了する話だったので、1年だったら何とかなるかなと思って引き受けたんです。それが全然1年で終わらないんですもん。2年になり、3年になり、先が見えず……みたいなことになりました」と笑って振り返る。
「本当にこれゴールできるかという状況もありました。一歩間違えればすっ転んで起き上がれなくなる危険性だってあったかもしれない」と吐露しながらも、「最終的にはなんとかゴールテープを切ることができて、先代の藤田さんから受け取った“クソ重たいバトン”を落とさずに最後まで走り切れたので、本当によかったなと思います」とプレッシャーを乗り越えて完結までたどり着けたことに胸をなでおろしていた。(編集部・小山美咲)