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記録的視聴数「クイーンズ・ギャンビット」主演アニャ・テイラー=ジョイが明かす役づくり

主人公ベス役のアニャ・テイラー=ジョイ
主人公ベス役のアニャ・テイラー=ジョイ

 Netflixでの配信開始から1か月で全世界6,200万の視聴を獲得したリミテッドシリーズ「クイーンズ・ギャンビット」。映画評論サイト Rotten Tomatoes の批評家の間でも97%と高評価を得ている本作について、主演女優アニャ・テイラー=ジョイ、共演のモーゼス・イングラムマリエル・ヘラー、衣装のガブリエル・ビンダー、製作総指揮のウィリアム・ホーバーグが、1月12日(現地時間)に開催されたDeadline主催のQ&Aで作品への想いを語った。世界中で注目されている人気女優アニャの経歴についても紹介する。

めっちゃ美人!アニャ・テイラー=ジョイ【画像】

女性チェスプレイヤーに没入していった主演女優アニャ

 本作は、9歳の時に交通事故で母親を失った少女ベス(アニャ)が入所した養護施設の用務員から教わったチェスによって自身の才能を開花させ、男性社会と言われたチェスの世界でのし上がっていく様を描いたもの。作家ウォルター・テヴィスの同名小説を基に、『マイノリティ・リポート』の脚本家スコット・フランクがドラマシリーズの監督を務める。

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 主人公ベスを演じたアニャは「スコットの脚本を読んだ時点で、この作品は人々にどんな影響をもたらすかと、もし撮影前に誰かから聞かれていたら、おそらくとても大きなものになると答えていたと思う」と語り、脚本を読んだだけで、これまで自分が出演した作品の中で、ベストになる予感があったそうだ。

 そんなアニャは、アルゼンチンとスコットランド系の父親とアフリカ、スペイン、イギリス系の母親のもとマイアミで生まれ、どこかミステリアスとあどけなさが共存する個性的な女優だ。彼女は生まれてすぐ家族と共に渡ったアルゼンチンでスペイン語を学び、6歳の時にロンドンに移ってからは英語を話すようになった。そして、なんと14歳で女優を目指してニューヨークに移住し、モデルの仕事をしたり、いくつかのTVシリーズに出演した後、サンダンス映画祭で高い評価を受けたロバート・エガース監督の映画『ウィッチ』で世間から注目されることになる。その後も、M・ナイト・シャマランの『スプリット』『ミスター・グラス』、ジョシュ・ブーン監督の『ニュー・ミュータント』などで一躍ハリウッドの期待の若手女優としての地位を確立していく中で、今作「クイーンズ・ギャンビット」で主役の座を射止める。

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 アニャが演じたベスという役柄は、ドラッグやアルコール依存症だけでなく、大きな感情の揺さぶりを表現しなければならないうえに、女性チェスプレイヤーとして尊敬を受けるために戦わなければいけない。そんな役柄についてアニャは「役柄が自分のためにあると信じることができたのは不思議だった。全てが脚本に記されていたため、この役柄の内面に入っていくのに、それほど苦労はしなかった。でも逆に、それまで私が経験してきたことと、ベスがそれまで経験してきたことを区別する方がむしろ難しくなった」と明かすほど、自然に演じこの役にのめり込んでいったそうで、そんな彼女の役柄への没入の仕方に、周りの俳優もスタッフも敬意を表してくれたという。

「クイーンズ・ギャンビット」映像化のはじまり

「クイーンズ・ギャンビット」
原作はウォルター・テヴィスの同名小説

 この世界中を魅了した「クイーンズ・ギャンビット」は、今作で製作総指揮を務めたウィリアムと、小説「イギリス人の患者」(映画『イングリッシュ・ペイシェント』として映画化された作品)の作家マイケル・オンダーチェとの出会いから生まれた。

 「マイケルが『クイーンズ・ギャンビット』の小説を定期的に読み返しているほど好きなことを僕に明かしてくれた。僕も読んでみて気に入ったんだけど、なぜこんな優れた小説が、今まで映画化されていないのか、版権を調べてみたんだ。すると、その版権を所有していたのが僕の旧友で、脚本家兼製作者でもあるアラン・スコットだった」。そこでウィリアムは、アランとタッグを組むことになり、さらに当時、パラマウント・ピクチャーズの重役だったウィリアムは、映画『リトルマン・テイト』の頃から好きだった脚本家スコット・フランクに原作を送り、脚色を依頼したという。そして、世界中を魅了したストーリーが始まっていく。

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脇を固める個性派2人

 母親を事故で失い、養護施設で暮らすことになったベスは、大人びた黒人女子のジョリーンと仲良くなる。そんなジョリーンを演じたモーゼズは、1960年代当時のアメリカ南部の州では、ジム・クロウ法(1876年から1964年にかけて存在した、人種差別的内容を含むアメリカ南部の諸州の州法)について触れながら、ジョリーン役について語った。「私の演じたキャラクターは、人々にリアルなキャラクターとして認識して欲しいけれど、ベスとジョリーンの関係性がまるで姉妹だと言ってしまうのは、(当時の状況を知れば)世間知らずだと私は思う。明らかに彼ら二人は異なっていて、彼らの関係性は外見よりも異なっている。それでも、彼ら二人はこの地(養護施設)を通してたくさん繋がることができた。それが、美しい関係の一つよ」

 ベスが養護施設の暮らしに慣れ始めた時に、ベスは育て親となるオールストン&アルマ・ウィートリー家に引き取られることになる。そして、ベスの成長過程で母親となるアルマとの関係も重要になっていくが、そんなアルマを演じたマリエルは「脚本と原作を読んだ際に、アルマにすごく共感が持てたのは、彼女の自由の欠如だった。アルマは愛のない結婚生活に身動きが取れず、そして彼女の生まれた(女性として自由のない)時代に残され、ピアニストになるという夢も達成できなかった。アルマは、人生であらゆる望んでいたことができなかったの」とアルマという人物について分析した。

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 そんなアルマを見て、女優だけでなく、映画『ある女優作家の罪と罰』で監督経験もあるマリエルは「私のキャリアと人生において、自分がどれほど幸運なのかを実感したのは、私にはアルマのような制限がなかったから。私はアルマのように行き詰まった感覚はなかった。アルマは、まるでドールハウス(人形の家)に閉じ込められているようで、彼女のアルコール依存症も完全な不幸からきている。彼女はとても不満な状態だったから、彼女がどのように感じているのか想像するのは、それほど難しいことではなかった」と感じたという。そんな中で、アルマは新たに娘となったベスに自分にないものを見出し、ベスが自分のやりたいことを通して、情熱を追い求めることに気づいていく。そしてベスによって、アルマも解放されていく。

ファッショナブルかつ繊細な衣装設定

「クイーンズ・ギャンビット」
ベスのファッションにも注目!

 本作の魅力の一つにもなっているファッショナブルな衣装を担当したガブリエルは「全ては原作に記されていたの。原作を読み、60年代のチェスをプレイする人たちを描いたものだと知った際に、何かを感じたの。だから、実際に当時のチェスのプレイヤーをリサーチし始めたときは、すごく興奮したわ。なぜなら、これらのチェスのプレイヤーは、誰もが個性的なスタイルをしていたからそのリサーチが、今回の衣装を作る上で、主に基本的なインスピレーションになった」と明かした。一方、ガブリエルに全幅の信頼を寄せるアニャは「(第1エピソードで)私がバスタブから服を着たまま濡れた状態で出てくる衣装は、当然、濡れていてもしっかりとした衣装で、さらにその前日にも同じ衣装を着ている設定だから、ルックスもちゃんとした衣装でなければいけなかった。さらに、着替えた後の緑の衣装は、最初に見たときは気づかなかったのだけれど、あれは、それまでエリザベスが飲んでいた精神安定剤のカラーと同じ緑なの。そんなところまで気を使うことができるのが、デザインを担当したガブリエルなの」と彼の仕事ぶりをたたえた。

1960年代を描くうえで絶好のベルリン建築

 今作はドイツやカナダで撮影が行われ、1960年代を描くうえで、それらのロケーションがどの様に影響を与えたのかについて製作総指揮のウィリアムは「ベスはいくつか別の国々を訪れていて、ある意味で、この映画はロードムービーとも言えるかもしれない。僕らには、ウリ・ハニッシュというプロダクション・デザイナーがいて、彼は、ベスが訪れる国々をベルリンで作ることができると提案してくれたんだ。ほとんどが室内の撮影だが、ベルリンの建築が第二次世界大戦後の冷戦下の建物の美的感覚に似ていた」と説明した。

世界の人たちとの集合体験

 「この作品は、何か(生きる)意味を私に与えてくれた」というファンからの言葉に、マリエルは驚き、あることに気づいたそうだ。それは近年、集合体験のようなものがなくなりつつあることだという。「最近は、(多くの配信サービスにより)誰もが同じ番組を同じ時間帯に見なくなった。以前のようにマイケル・J・フォックスが出演していた『ファミリータイズ』を家族みんなで毎週木曜日見ているようなこともなくなったわ。でも、誰もが見たこの作品『クイーンズ・ギャンビット』に参加することができたのは、素晴らしい集合体験だったと思うの。私たちは、この番組を通して、世界の人々と集合体験ができたと思っているの」

 最後にアニャも「人々がこの番組を気に入り、これらのキャラクターを愛し、この番組を楽しんで支援してくれたことは、私にとって、これ以上のことはないと思っているわ」と感謝の意を述べた。(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

Netflixオリジナルシリーズ「クイーンズ・ギャンビット」独占配信中

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