『銀魂』銀時&高杉、クライマックスシーンの意図は?宮脇監督に聞く
空知英秋による人気漫画「銀魂」(集英社ジャンプコミックス刊)を原作にしたアニメ「銀魂」シリーズの集大成となる映画『銀魂 THE FINAL』(公開中)の宮脇千鶴監督に、反響を呼んでいるクライマックスシーンの制作の裏側を聞いた。(一部、ストーリーの詳細に触れています)
『銀魂 THE FINAL』は1月8日に公開されると、公開週末の全国映画動員ランキング(興行通信社)にて、それまで12週連続1位だった『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』をおさえて1位を獲得。アニメ「銀魂」史上最大のヒットスタートを記録し、15年続いてきたアニメ「銀魂」の強さを見せた。
描かれるのは、『THE FINAL』というタイトル通り、原作におけるラストのエピソードをベースにした物語。主人公・坂田銀時と、幼少の頃を松下村塾で共に過ごしたかつての盟友・高杉晋助、桂小太郎が、最後の敵として3人の師でもある存在に立ち向かっていく。宮脇監督によれば、「銀時が松下村塾で培ってきたものの最後の整理」というコンセプトで物語は展開。銀時、高杉、桂の関係および生きざまは、シリーズを貫くテーマであり、その結末が描かれるのが本作だ。
「道を違えたものたちが、師匠という存在の下にもう一度同じ道を進む。3人の関係はテレビシリーズからずっと描いてきているので、映画で特別に意識したことはありませんね」とはいうものの、映画ならではスケールと臨場感で映し出される銀時らの表情は印象的で、観る者の心を震わすものがある。
「こちらから特にオーダーはしてないのですが、作画さんや演出さんたちの熱が表れたのかもしれません。『銀魂』は、作品に最初期から関わっているメンバーがかなりたくさん残っている珍しい現場です。15年ずっと一緒に走ってきた人たちが、作画や仕上げといった各セクションにいるので、15年で培った気持ちをそれぞれフィルムに表れるかたちで出してきたところがあるのかもしれませんね」
また、原作漫画からもふくらみがある銀時と高杉によるクライマックスシーンについては、「実は芝居的な都合から必要になるシーンで、あのシーンを作ること自体がメインの目的ではなかったんです」と明かす。
「出発点は本当に色気のない話なんです。死ぬ間際の状態で話をする芝居ってどうしても尺が長くなってしまう。漫画だと台詞は文字なので何ページ続いても気にならないのですが、映像は時間という制約があり、苦しそうにしゃべる演技が長時間続くとアニメーションの性質上、だんだん辛くなってくるんです」
それを緩和するために、イマジナリーなシーンを差し込むことになったのだとか。重傷を負った高杉が元気な姿に戻り、銀時と言葉を交わす情緒的な場面だ。
「高杉が暫く普通に会話できる状態にもっていきたく、そのために何ができるだろうと考え、その結果、あのような幻想的なシーンになりました。そこまでの虚(うつろ)とのバトルシーンで、夢か現か、何が現実なのかわからないというシーンがずっと続きます。その流れで、これは誰かが見た景色なのか、そうではなく夢なのか、というシーンをもう一つ挟んでシークエンスのまとめとなればとも思いました。だから、あれは誰視点でもあるし、誰視点でもないんです」
(編集部・小山美咲)