広瀬すず「なんとかなる」精神で進化続ける!ラップバトルで新境地
俳人・堀本裕樹の青春俳句小説「桜木杏、俳句はじめてみました」を、俳句の楽しさとラップの魅力を融合させてWOWOWが映像化した「ドラマWスペシャル あんのリリック -桜木杏、俳句はじめてみました-」。本作で、主人公・桜木杏を演じたのが、近年個性的な役柄に精力的に挑んでいる広瀬すずだ。俳句やラップという「言葉」の意味や響きを大切にする表現方法を体感したことで「より言葉の持つ強さ」を感じたと話す広瀬が、普段から自身に言い聞かせている「言葉」について語った。
広瀬が演じた杏は、人と関わることが苦手で、下宿の部屋で一人ラップのリリック(歌詞)を考え、ほくそ笑むようなちょっと変わった女の子。広瀬は台本を読んだとき「いままでとは違うお芝居をしたい」と意気込んで撮影に臨んだ。
意識したのは「人が持つ『間』のリズムになんとなく違和感を持たせる」こと。しかし実際に撮影現場に入ると、想像以上に杏に対する周囲の人たちの目線に愛を感じた。「途中から愛されキャラなんだとわかったらお芝居が変わっていってしまいました」と笑う。撮影現場に入ったときの感覚で臨機応変に対応できることも芝居の醍醐味だと感じ、撮影を楽しめた。
劇中では、カリスマラッパー・ハゲボウズ(板橋駿谷)とラップバトルを繰り広げるシーンもある。広瀬自身、初体験となるラップ。早口で思いのたけをぶちまけるシーンは非常に難易度が高そうだが「ハゲボウズ役の板橋さんは、朝ドラの『なつぞら』で共演していて、仲が良かったので、まったく緊張せずに思い切り楽しめました。もし板橋さんじゃなかったら、ものすごく大変だったと思います」と撮影を振り返る。
技術的には、ラップの先生がお手本を見せてくれた音源をもらい、リズムとテンポを自身に叩き込んだ。その後は、ハゲボウズと合わせ何度も練習を繰り返す作業。「杏自体もラップをやったことがない設定だったので、うまくというよりはしっかりと自分の思いをリズムに乗せてぶつけようということを心がけました」
これまでも広瀬はフリ幅の大きな難役と思えるようなキャラクターを演じてきた。多忙な日々、厳しいと思える状況も多々あったが基本的には「なんとかなる」という言葉を心のよりどころに進化を続けてきた。
「いまヤバいと思っていても、時間が過ぎればなんとかなるんです。なにがあっても家には帰れるし、そうすれば日常に戻れるじゃないですか。『なんとかなる』と思っていることで、心のバランスも保てるんです」
杏のように自ら書いたり、つぶやいたりすることはあまりなかったが、本作を経験したことで「シビアなことに対しても、楽しいことに対しても、言葉によって人は変わるんだということは実感できました。想像以上に言葉の力って強いですよね」と感想を述べる。
だからこそ、今後の楽しみも増えた。「もともとわたしは、積極的に自分の思いを人に伝えることをしないタイプです。でも言葉を通してつながることで世界が広がっていくんだなと思えたので、しっかりと言葉で伝えることで、まだまだ知らない世界や見たことがない景色が広がっていくのかなと思うと楽しみになってきました」と目を輝かせる。
2020年は、世界中でこれまであたりまえと思われていたことが、あたりまえではないと実感させられた。広瀬は「最初はどうしたらいいんだろうという焦りはあったのですが、ゆっくりと穏やかな時間を過ごすことで、しっかりインプットすることができました。休むのって大切だなと感じられた有意義な時間でした」と振り返る。
ある意味で多くのことを吸収できた2020年を経て、新たな年がやってきた。「温かい雰囲気が充満している作品」と語った「あんのリリック」には「なんとかなる」という広瀬イズムが散りばめられた作品になっている。(取材・文:磯部正和)
「ドラマWスペシャル あんのリリック -桜木杏、俳句はじめてみました-」(全2話)は前編が WOWOWプライムにて2月27日よる9時~放送(前編放送終了後、WOWOWオンデマンドで前後編を一挙配信)