「おちょやん」寛治役の前田旺志郎、素直さと危うさのバランスを大切に
連続テレビ小説「おちょやん」(月~土、NHK総合・午前8時~ほか)で、新たに登場した松島寛治を演じている前田旺志郎。複雑な内面を持つ寛治役を務めるにあたって意識したことや、ヒロインを演じる杉咲花への思いを語った。
「おちょやん」は、明治の末に大阪の南河内の貧しい家に生まれた竹井千代(杉咲)が、女優の道を駆け上がる姿を描く物語。前田が演じているのは、新派の劇団の座長の息子で、早くに父を亡くした松島寛治。第16週から登場し、大山鶴蔵社長の命令により鶴亀家庭劇に預けられ、千代と一平(成田凌)のもとで生活することになった。
寛治とは境遇が似ていることもあり、母親代わりを務めようと頑張る千代。一方の寛治は明るさを絶やさないものの、どこか影も感じさせる。朝ドラとしては「わろてんか」に続いて2度目となる前田が、繊細な演技で複雑な人物像を際立たせている。
そんな寛治について、前田は「自分が本当に思っていることをことばや表情になかなか出さない複雑な子です。なので、台本を何度も丁寧に読みながら、このセリフは本当はどういう思いで言ったのだろうと、書かれているすべてのことばの真意を自分なりに探しながら大切に演じています」と思いを明かす。
「でも、あまり理詰めに考えすぎないようにもしています。寛治は、千代と一平と暮らしているなかで、ある事件を起こしてしまいます。それは、千代と一平は、これまで寛治が出会った人たちとは違い、この二人だけは信用してもいいと思い始めた矢先の出来事だったので、僕のなかではなぜ二人を裏切るような行為をしたのかわかりませんでした。でも、寛治自身もわかっていなかったんじゃないかな。寛治自身でさえも理解できない部分もあって、若さゆえの素直さと同時に、もろく危うい部分もあるということに気がつき、そのバランスを大切にして演じています」
劇中では、寛治のことを心から心配する千代。演じる杉咲については「撮影中はもちろんのこと、撮影以外でも千代そのもので、すべて包み込んでくれています!」という。「僕は途中からの参加で、当初はガチガチに緊張していました(笑)。でも、まるで千代が寛治の面倒をみるように杉咲さんが常に気遣ってくれて、出演者やスタッフの皆さんに紹介してくれてだいぶ緊張が和らぎました。きっと寛治も千代にこういう思いを抱いたのだろうなと思い、すんなりと演技に反映できました」と感謝の気持ちを口にする。
また、今後の展開について「物語は戦争に突入していき、寛治自身も千代との関係性が変化していくことになります。人間の良い部分だけでなく汚い部分や悪い部分もすべて包み込んでくれるような作品になっていますので、全人類にご覧になっていただきたいです!」と力強く語った。(編集部・大内啓輔)