松田龍平、山田孝之からの熱烈アプローチ明かす
竹中直人、山田孝之、齊藤工が監督を務める映画『ゾッキ』の公開記念舞台あいさつが3日にTOHOシネマズ日比谷で行われ、山田監督が松田龍平に対して行ったという熱烈オファーの一端が垣間見えるエピソードが明かされた。この日は3人の監督と松田のほか、出演者の森優作、松井玲奈らも来場した。
『音楽』などの原作で知られる漫画家・大橋裕之の初期短編集を実写映画化した本作は、原作のエピソードを組み合わせた何気ない日常を独特のおかしみで描き出す。撮影は、原作者の生まれ故郷である愛知県蒲郡市で行われた。企画・監督を務める竹中は「2018年の5月に、前野朋哉という大好きな俳優と舞台をやった際、彼の楽屋にあった冷蔵庫の上に原作があったので借りて読みました。それを読んだ瞬間に感動しました。それがこういう形で映画化するとは思いませんでした」と感激の表情を見せた。
劇中で、とっさに友達についてしまったある“嘘”をきっかけに、嘘を塗り重ね、秘密を抱えてしまう高校生・牧田を演じた森は、「齊藤監督の作品に関わること自体がすごくうれしかったんですけど、台本を読んで齊藤さんは変態だなと思いました。この役を俺にやらせるのかというのは驚きというか、恐怖……ではなくしあわせでした」と語り、会場は大笑い。「恐怖としあわせは表裏一体ですからね」と続けた齊藤監督も「大橋さんの原作自体があの頃の甘酸っぱい、内なるものがあって。牧田というキャラクターは大橋先生の概念を擬人化した役なので、大橋裕之臭がする俳優さんは森さんしかいないと思いました」とキャスティングの理由を明かした。
そして、齊藤監督が「映画では、(街のコンビニで)龍平さんと森さんが共演する場面があるのですが、モニターをのぞきながら、森さんの心境になってドキドキしました。すごい瞬間だなと思って」と明かすひと幕も。その言葉に森は、意を決したように「実は優作というのは本名で、母親がみゆきと言います。1989年、松田優作さんが亡くなられた年に自分を産みました。(優作さんへの)愛情が過ぎてしまって、ファンだった人の名前をつけてしまった。しかも本人は役者になるなんて思っていなかったので。本当に申し訳ない」と恐縮することしきり。そんな森に向かって松田も「お父さん」と冗談めかして呼びかけてみせるなど、和やかな雰囲気が会場を包み込んだ。
また、松田は「はじめに山田くんから『映画をやるけどどう?』と電話があったんです」とオファー時を振り返ると、「その時はスケジュールがわからないけど面白そうだねと言ったんですが、そこから山田くんのメールがすごい熱量で来たんで、だんだん怖くなってきた。1回、メールも見なかったことにしようと思ったんです。熱量がすごかったので、それに応えられるかドキドキしましたね」と経緯を紹介。山田監督も「原作を読んでいて、この役はこの人がいいと選んでいくのですが、スケジュールの都合もあり、無理な人も出てくる。でも龍平くんは絶対にやってもらうからと、ずっと熱いアプローチを送っていました。だから龍平くんが芝居をしている姿を見た時はたまらなかったですね」と笑顔。さらに松田が「現場に行くととにかく安心するというか。山田くんの顔色をずっとうかがっていましたね」と打ち明けると、山田監督も「俺もこっそりと見てた」と返答。その相思相愛ぶりに会場は大いに沸いた。(取材・文:壬生智裕)