尾野真千子「今やらなあかん」コロナ禍に命がけで臨んだ主演作に手応え
女優の尾野真千子が27日、スペースFS汐留で行われた主演映画『茜色に焼かれる』の完成報告会に出席し、コロナ禍で行われたという懸命の撮影を振り返った。この日は尾野とともに共演者の和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏、石井裕也監督が登壇した。
尾野真千子、オダギリジョー、永瀬正敏ら登壇!イベントの様子【写真】
本作は、生きづらい世の中で時代に翻弄(ほんろう)されてきた良子(尾野)が、愛する中学生の息子と共にたくましく生きていく姿を描く人間ドラマ。『舟を編む』『町田くんの世界』などの石井監督がメガホンをとった。
この日の尾野は、演じる良子の勝負カラーでもある赤い衣装で登壇。本作への出演経緯について聞かれると、「出演しようと思ったのは、台本を読んで『自分が伝えなきゃ』と思うことがたくさん詰まっていたからです」と説明。コロナ禍ゆえに、この作品が世に出ることを望んだとそうで「監督には命がけでやります、と言いました。『今やらなあかん』と背中を押してくれるような映画だったんです。自分にとって最高の映画になりました」と胸を張る。
コロナ禍で行われた撮影も「精神的に辛いときもありましたが、自分の気持ちが(演技を通じて)変化していく感じなど、楽しい撮影だなと思いました」とポジティブに捉えて自分を奮い立たせた。感染症対策の制約のなか、座長として監督とともに撮影現場を守ろうと思ったともいう尾野は「主役ということを気にせず楽しくやろうと思っていました。たくさん気をつけないといけないことがあるなかで、距離は遠くてもニコニコと楽しくやっていればいいものになるんじゃないかと」と撮影現場での心境を振り返る。
母役であることも印象深かったという尾野。「良子を演じるのは正直大変。でも撮り続けると、母ってこんなに一生懸命なんだと。自分が母になったことはないけど、良子のその大変さに納得できるようになりました」としみじみ。そんな尾野に対し、良子とその息子のケイを見守る風俗店の店長を演じる永瀬は「尾野さんが監督と一緒に撮影現場をハグしてくれているような雰囲気。芝居も鬼気迫る感じでしたが、それ以外は作品を守ろうとしている感じが伝わりました」と称賛の言葉を送る。
オーディションを経て良子の息子役という重要な役を射止めた和田。尾野について「お会いする前は怖い人だなというイメージがあったのですが、実際は明るくて優しくて面白い人だなと。土手沿いを自転車で二人乗りする走るシーンで、カットのたびに元の場所に戻るのですが、その度に二人乗りで戻って本当の親子のように接してくれました」と笑みを浮かべる。
良子の亡き夫を演じたオダギリも尾野の奮闘に感銘を受けたという。「同じ時代を歩んできた仲間の一人」と尾野を称しつつ、「眉間にしわが寄りやすいところがあって、今回はそれも良かった」と冗談交じりのコメント。演技の完成度には太鼓判を押して「今まででこれが一番素晴らしかった」と絶賛した。(取材・文:名鹿祥史)
映画『茜色に焼かれる』は5月21日より全国公開