「テニスの王子様」声優・皆川純子、20年演じるリョーマは「憧れであり自分の一部」
連載開始から22年、テレビアニメ20周年を目前に控えた漫画「テニスの王子様」。その新作映画『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』が9月3日に公開される。主人公・越前リョーマを演じる声優の皆川純子に20年の歩みを聞くと、思わず涙をこぼしながら作品への深い思い入れを明かした。皆川にとって、リョーマは「憧れの存在であり、自分の一部」であるという。
許斐剛による人気漫画「テニスの王子様」と「新テニスの王子様」の間にある空白の3か月を描く本作。全国大会決勝戦後、リョーマはテニスの武者修行に出かけたアメリカで、ギャングに絡まれていた同級生・竜崎桜乃と遭遇する。彼女を助けるためにボールを放つと、時空がゆがみ始め、2人はリョーマの父・越前南次郎が「サムライ南次郎」として世界で名を馳せていた時代にタイムスリップしてしまう。
いつか演じなくなっても、リョーマはずっと自分の中にいる
原作漫画では描かれていないリョーマの冒険譚が映画ならではのスケールで展開する。皆川はまず、リョーマのこれまでにないセリフの多さに驚いたという。
「台本を読んで驚きましたが、リョーマの新たな一面を見せられたと思っています。私自身も“こんなリョーマ見たことない”と思いました。リョーマは“テニスの王子様”ではありますが、今作では等身大の“中学1年生・越前リョーマ”がそこにいました。もちろん基本的な部分は普段通りクールでかっこいいのですが、彼の持つ優しさや子供っぽさ、真っすぐな男らしさというのをいかんなく発揮できている。リョーマの魅力がぎゅっと詰まっています」
本作で描かれるリョーマの姿が新鮮だったと話しながら、まったく違和感なく演じられたとも振り返る。長年演じてきた経験から「基本的にリョーマの気持ちで演じられる」という皆川。それは、リョーマと共に作品をけん引するキャラクターであり、本作のキーとなる手塚国光、跡部景吾、幸村精市、白石蔵ノ介との会話シーンにも象徴される。作品を観ると、それぞれに対するリョーマの声色の違いからリョーマとの関係性がうかがい知れるが、その演じ分けは無意識なのだとか。
「相手が誰だからこうしようと変化をつけているつもりはないのですが、完成版を観たら『あ、変わってるな』と思い、無意識にやっているんだと感じました。跡部にはあんなリアクションで、そういう認識なんだって(笑)。手塚に対してはやっぱり少し頼る気持ちが出ているなと感じたし、幸村と白石にはちょっとだけ距離があるんです。跡部はもうちょっと近いかなってくらいで、手塚はそれよりもさらに近い。でも意識しているわけではないんです」
それもリョーマを20年演じてきたからこそ。2001年に放送が開始された「テニスの王子様」は今年10月に20周年を迎える。皆川にとって、この20年は「めちゃめちゃあっという間」で、オーディションでリョーマ役に決まった時のことをついこの間の出来事のように思い出せる。その20年の間、皆川とリョーマの関係は少しずつ変わってきたという。
「明確にいつからこうなったというのはありませんが、最初はこの子を演じることに必死で、リョーマを知ろうというところから入りました。それがだんだんと……周りが私をリョーマにしてくれたというんでしょうか。ファンの皆さまとスタッフさんと共演者が、越前リョーマ=皆川純子と、私が自信を持ってリョーマを演じられるように、いつの間にか背中を押してくれていました。そうした環境でリョーマを演じていくうちに、どんどんリョーマと一体化できていった気がします。今となっては、リョーマは私の憧れの人であり、一部であり、家族であり……いつかリョーマを演じなくなっても、ずっとずっと自分の中にいる人だなって思います」
20年、共に歩んだ青学のキャスト陣は誇り
そして、長年共に歩んできた共演者とのつながりは、皆川にとってかけがえのないもの。「テニスの王子様」ではライブなどのイベントが多数行われており、絆を育む場は収録現場だけではなかった。さらに中学校の部活動を描いた物語であることから、学校の部活のような熱量を感じてきた。「学校ごとに連帯感が生まれて、もっと自分たちの学校を盛り上げようと各チームの思いがまとまってまた大きくなっていくみたいな感じなんです」と話しながら、青学キャストの話題に及ぶと一言一言に思いを込める。
「青学のみんなのことを考えると、私はこんなに魅力的な方たちと知り合えたんだなって胸がいっぱいになるんです。青学以外のキャストの方々ももちろんそうなのですが、やはり青学のキャストの皆さんへの思い入れは一段と深くて……」ここまで話すと、皆川は言葉を詰まらせ、目に涙をにじませた。
「なんで泣いてるんだろう(笑)」と戸惑いながらも、「個々の力が圧倒的で、こんなに芸達者な人たちと一緒に仕事をできていることが本当に幸せです。収録現場では、テストでは笑いを交えて楽しくやって、本番ではスイッチを切り替えて完璧にやるというのがいつもの感じ。楽しい雰囲気があったからこそ、今の『テニプリ』になっていったんだと思います。自慢ですね。青学のキャスト陣は私の誇りです」と笑顔になる。
「テニプリを好きになってくれた人を絶対に幸せにしたい」と語る皆川。「許斐先生がやることに私もできるだけついてきたいと思っていたし、それをファンの皆さんに楽しんでもらいたいといつも思っています」と20年間変わらず大切にしてきた思いを打ち明けた。
改めて、映画『リョーマ!』にまでつながる「テニスの王子様」の魅力を聞くと、「『テニスの王子様』は少年漫画の王道だと思っているんです。入り組んでいなくてとっかかりやすく、勧善懲悪の部分もあるし、闘志のぶつかり合いだから熱くなれる。見ていてワクワクするんです。そしてキャラクターたちが圧倒的にかっこいい。この条件がそろうのはありそうでなかなかないんです。女性ファンの方が多いイメージだから少年漫画っぽくないのではと思われるかもしれませんが、実はかなり少年漫画です。この映画にはそうした子供の時に読んでいた漫画のワクワク感や爽快感かぎゅっと詰まっています」と思いを込めた。(編集部・小山美咲)
映画『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』は9月3日公開