『レミニセンス』に日本映画へのオマージュあり!監督が明かす
ヒュー・ジャックマン主演の最新SF映画『レミニセンス』LA生中継舞台あいさつ&日本最速試写会が26日にスペースFS汐留で行われ、『ダークナイト』や『インターステラー』の鬼才・クリストファー・ノーラン監督の弟夫妻となるジョナサン・ノーランと、リサ・ジョイ監督がオンラインで舞台あいさつを行った。この日は、ノーラン作品の大ファンである映画監督の山崎貴も聞き手として来場した。
世界中が海に水没した近未来を舞台にした本作は、他者の記憶に潜入することのできるエージェントが、ある女性との出会いをきっかけに凶悪事件に巻き込まれるさまを描くSFサスペンス。製作のジョナサンは、『ダークナイト』や『インターステラー』の脚本を兄と共同執筆するなど、クリエーターとしても注目の存在。そしてジョイ監督は、ジョナサンがプロデューサーを務める海外ドラマ「ウエストワールド」シリーズで注目を集める新鋭で、本作が長編映画初監督作となる。
本作を鑑賞したという山崎監督が「特殊な設定なんですが、それがないと語れない物語、装置、シチュエーションが重要な鍵となっていて。しかも心をえぐられるようなせつないラブストーリーになっているのが良かった」と感想を寄せた。ジョイ監督は「そんなふうに言っていただいて、本当に光栄です。もちろん未来をスペクタクルに見せるということも楽しいことではあるんですが、同時にすごくエモーショナルな側面というものにとても興味を持っています」と返答。ジョナサンも「良質なSFは没入できる世界観、ストーリーの両方がないと駄目だと思う。リサはその両面で作ってくれたので、誇りに思っています」と語った。
さらに影響を受けた作品についてジョイ監督は、「SFでいうと、それこそ『ブレードランナー』なども好きなのですが、今回の撮影は女性の視点から、違ったアプローチを試みています。例えば劇中の電車のシーンは、わたしが宮崎駿監督が好きなので、『千と千尋の神隠し』へのちょっとしたオマージュがありますし、わたしたちがどんな風に人を見るのか、それが愛とどう関わっているのかという面で、『羅生門』や『めまい』を参考にしています」と明かした。
そんな本作に、滅びの美学や、他人から観たら不幸でも本人にとっては幸せであるという感情のずれ、といった「日本的なもの」を感じたと語る山崎監督。「ネタバレになるので、詳しくは言及できないですが」と言いながらも、溝口健二監督の『近松物語』を例に出して、その類似性を指摘した山崎監督。その発言に対してジョイ監督は「感覚的な話で言うと、まさにおっしゃる通りで、私の母はアジア系なので、小さな頃からアジア系の文化、あるいはアジア映画に大きく影響を受けてきました」と自身について語った。
続いて「溝口監督を比較対象に語っていただいて光栄です」と語ったジョナサンも、「僕も日本映画が大好きで、『ウエストワールド』でもオマージュをささげています。そして山崎監督が鋭いなと思ったのが、記憶についてですね。誰かの瞬間的な記憶も、違った角度から見ると違ったように見える。それを初めて成立させたのが『羅生門』だったと思います。わたしたちの見方の違い、経験の違いというものを反映させるということを、日本映画は巧みに表現してきたと感じています」と指摘した。
そんなオンライン越しのやり取りを終えた山崎監督は、「すごく楽しかった。いつかリアルワールドでお会いして、SFオタク話をさせてください」とラブコールを送り、ジョナサンたちと再会を誓い合うひと幕もあった。(取材・文:壬生智裕)