奈緒、夫役の東出昌大が「最初は怖かった」共演を振り返る
東出昌大が22日、ヒューマントラストシネマ渋谷で行われた主演映画『草の響き』の公開記念舞台あいさつに来場。役づくりを行っていくうえで、共演者の奈緒から「最初は怖いと思っていた」と明かされる一幕があった。斎藤久志監督とともに
本作は、1990年に逝去した作家・佐藤泰志の小説を原作にした物語。心を病み、妻・純子(奈緒)とともに故郷の函館に戻った主人公の和雄(東出)が、精神科の医師(室井滋)に治療としてランニングを勧められ、走ることを通して再生していく姿が描かれる。
主演を務めた東出は「原作では独身の設定で、研二という友人が出てくる話ですが、映画では夫婦生活を営んでいて、奥さんは子供を身ごもっている(という設定)。かつ函館の街を走るという脚本に変わっていて、映画的に成功しているなという印象を受けました」と語る。
奈緒が演じる妻の純子は原作には登場しない映画のオリジナルキャラクター。奈緒はこれまで夫婦を演じることが少なかったそうで、「二人の中に歪みが生まれているという始まりだったので、すごく難しい部分でした。(夫婦として)一番近いところにいるのに遠く感じてしまうのですが、東出さんと話をして和雄という役を理解したい自分の気持ちと、純子が夫のことを理解したいという気持ちが重なった気がします」と振り返る。
ただ、斎藤監督いわく、奈緒自身は当初はガチガチに緊張しており、東出のことを「怖い」と感じていたという。奈緒は「もちろん悪い意味ではなくて。それまで東出さんとはすれ違っただけで、本当にごあいさつ程度。自分自身のお芝居への不安がいろいろなものを恐怖に変えていたので、東出さんのことも怖く見えた自分がいて。でも、最初のシーンの時に監督から『そんなに怖いやつじゃないよ』と言っていただいて、私も単純なので、少しお話をしてみようと。そこから一緒にお昼を食べたりして、それはすごく大きかったです」と明かす。
一方の東出は奈緒について「単純なんじゃなくて、ずっと強くあろうと心がけてくださる方なのかなと思いました」と語る。続けて斎藤監督も「(物語の時系列に沿って)順撮りで撮影できたので、それもよかった。回想シーンを最初に撮って、それぞれの関係性ができていく過程も見えました」と目を細める。
監督の言葉を受けて、東出は「監督が奈緒さんに惚れていたのがわかりました。奈緒さんのシーンはうれしそうに撮っていました」と語ると、斎藤監督は「それは単なる嫉妬。毎日、東出に会えるのがうれしくてしょうがなくて、俺は大東(駿介)と東出の絡みを見てすごく楽しかったんですよ」と返し、会場は大笑い。東出も驚きつつも「カメラの前に立つことは特別だという意識は根底にあるのですが、それでも高尚なものにし過ぎないようにしようという思いもあって。何だか非常に豊かな時間、映画的時間が撮影現場に流れてたように思います」としみじみ振り返った。(取材・文:壬生智裕)
映画『草の響き』は全国公開中