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「おかえりモネ」脚本・安達奈緒子が見た清原果耶の凄み「信じ切って書いていました」

「おかえりモネ」清原果耶
「おかえりモネ」清原果耶 - (C) NHK

 連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土、NHK総合・午前8時~ほか、土曜は1週間の振り返り)で脚本を手掛ける安達奈緒子。作品に込めた思いやヒロイン・清原果耶の表現力について語った。

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 「おかえりモネ」は、宮城県は気仙沼に生まれ育ち、登米で青春を送る永浦百音(清原)が気象予報という仕事を通じて、人々に幸せな未来を届けていく姿を描く物語。脚本をドラマ「きのう何食べた?」や清原の初主演ドラマ「透明なゆりかご」などを手掛けてきた安達が担当している。

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 放送も残すところ、あと2週。全話を書き終えて、安達は「2年以上、『おかえりモネ』という作品と向き合ってきたので、多少は解放感のようなものを味わえるのではと想像していましたが、書き終えた今のほうが、時間が出来たぶん四六時中このドラマのことばかり考えてしまって、『終わった』という感覚は今のところまだありません。そんななかで、この作品に携わってくださった方々への敬服のような気持ちがよりいっそう募ってきています。書いている最中は無我夢中ということもあり、物語に没入していましたが、これまでの過程を振り返るようになると、取材でお話をうかがったり、協力をお願いしたりした宮城の方々のお力はもちろんのこと、現場のスタッフや俳優のみなさまをはじめ、たくさんの人がこの作品に関わり力を貸してくださったことで、なんとかかんとか作り上げることが出来たのだと改めて強く感じています」と思いを明かす。

 「みんなが限界まで何ができるかを考え、表現してくださった跡が画面にありありと現れていて、ほんとうにみんなすごい、と、私が今いちばん、この作品の凄みに気圧されているような状態です。自分も考え得る限り考え、現時点で提示できるものはこれだ、というものを書いてきたつもりですが、それが携わってくださった方々の『思い』や『力』に見合うものだったのかどうか、冷静に考えられるようになるのは、放送が終わってしばらく経ってからだろうと思います」

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 物語を支えてきたのは、ヒロインを演じた清原。「ヒロインの百音は、清原さんを信じ切って書いていました。そしてやはり演じていただけて本当に良かったと思っています」という安達。

 「百音は10代にして『当事者でありながら、当事者ではない』という難しい立場に立たされた女性です。たった15歳で強烈に抱いてしまった罪悪感を胸に刻みつつ生きねばならない若者の、しかも19歳から24歳という短い期間を演じることは容易ではなかったと思います。大人として成長していく、いちばん瑞々しく眩しいくらいに輝いている年頃を『痛み』を伴いながら生きる。しかもその『痛み』は他者から見て分かりやすいものではないので、自分の中に抑えこんでしまったりする。それでも出会った人たちと自身を照らし合わせていくことで、『痛み』と向き合い昇華させていくさまを、清原さんが緻密に、繊細に表現してくださいました。物語の中で、まるで実際に5年間を経たかのように、百音の顔が19歳と24歳でまったく違います。どうしたらこんなふうに顔が変わるように演じられるのだろうと思わず画面を見つめてしまいます。私はもちろんですが、視聴者のみなさまにとっても、これからもずっと目が離せない存在になっていくだろうと思います。『おかえりモネ』は清原果耶さんがいてくれたからこそ表現できた物語です」

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 東日本大震災から10年。ドラマで描かれるのは、そのときの記憶を背景とした物語。安達は「東日本大震災を背景にドラマを描く、ということについては、おそらくこれから先もずっと考え続けると思います。正解は見つけられないと思いますし、正解を見つけようとすること自体が違うのではないかとの考えもあります」と語る。

 「ですが『その人の苦しみは、その人でなければ絶対に理解できない』という大前提から始めて、話を聞き、考えて得た震災に対する『伝えたい思い』は提示すべきだろうと。チームにそれをお話しして、それぞれのお考えも聞きました。現場は最後の最後まで力を尽くしてくださいました。当然のことながら提示したものが、すべての人に受け入れられるとは考えていません。ご協力いただいている宮城のみなさまの思いもうかがいました。その上で、自然との共生や、『痛み』について描いてきたこの物語の帰結をどのように表現するかを決めました。百音と未知が出した答え、耕治さんと新次さんが出した答えに、それを託しています」

 また、朝ドラへの特別な思いも生まれたようだ。「『ゆっくり』『時間をかけて』表現してよい場は、今あまり残されていないように思います。一見して魅力的だと感じてもらえないと切られてしまうし、長いと最後までつきあってもいただけない。でもこの『朝ドラ』というものは、半年近く、なんとなくでもたくさんの方の目の端に入る可能性が高い。学校のクラスにはいるけど、あまり話したこともないし、なんか変な人っぽい、みたいな感じでずっとそばにいられたらいいなと思っていました」

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 そんな朝ドラだからこそ、安達は「『ゆっくり』『時間をかけて』接してみたら案外味があるところもあって、一緒にいる時間が今は楽しい、そんなふうに最後は思ってもらえたら嬉しいですし、やっぱり変なヤツだったし好きにはなれないけど、まあ、あの人の人生だしそれはそれでいいや、みたいに思ってもらえても、それもありがたいと思います。視聴者の方々とドラマの中で生きる人たちが、『ゆっくり』『時間をかけて』関係性を構築することを許してくれるのが『朝ドラ』であり、やはりとても貴重な場だったと思っています」と振り返る。

 そして、天気という仕事と出会った百音の物語は最終盤へ。「ここまで見てくださって本当にありがとうございました。心から感謝しています。受け止めてくれる方がいなければ物語は成立しません。どんな受け止め方もあってよいと思います。ですが、やはりほんの少しでも、優しい気持ちや胸が熱くなるような感覚を抱いてもらえていますように、と願ってしまう自分がいます。誰もが以前よりも苦しい日々を過ごされているなかで、最後は希望を感じていただけるように書いたつもりです。そしてチームのみなさまが、それをより力強く表現してくださっています。あと少しとなり、私はとにかく寂しくてたまりませんが、最後までおつきあいいただけると嬉しいです」と思いの丈を述べた。

 「おかえりモネ」は10月29日に最終回を迎える(翌30日は最終週の振り返り)。続いて11月1日より、新たに「カムカムエヴリバディ」がスタートする。(編集部・大内啓輔)

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