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加賀まりこ、本番で込み上げるも監督ピシャリ「今の涙いりません」

映画『梅切らぬバカ』完成報告会に登場した塚地武雅、加賀まりこ、和島香太郎監督
映画『梅切らぬバカ』完成報告会に登場した塚地武雅、加賀まりこ、和島香太郎監督

 女優の加賀まりこが4日、都内で行われた54年ぶりの主演映画『梅切らぬバカ』(11月12日公開)の完成報告会に、共演の塚地武雅和島香太郎監督と登壇。19年目になる事実婚のパートナーに自閉症の息子がいる加賀は、同じ境遇の本作撮影中に込み上げるものがあり、何度も撮り直したという撮影の日々を振り返った。

加賀まりこ&塚地武雅『梅切らぬバカ』完成報告会【写真5枚】

 本作は、老いた母親と自閉症の息子が社会の中で生きていくさまを描くヒューマンドラマ。占い師の山田珠子(加賀)は自分の死後を考え、自閉症の息子・忠男(塚地)をグループホームへ入居させるが、環境の変化に戸惑った忠男はホームを抜け出してしまう。塚地は忠男を演じるにあたり、さまざまな資料を見たり、自閉症の方やその家族に話を聞いたそうで、加賀からも「うちの子はこういう感じのことをするよ」と教えてもらい、特有のクセや動きを作り上げたことを打ち明ける。「でも、基本的に塚地さんのオリジナルですよ」と加賀は、努力のたまものと称賛。撮影現場では「(塚地が役に)入っているから、あまり話しかけてはいけないと思っていました」と温かく見守っていたことを明かした。

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 そんな加賀は、撮影中は「なるべく普通に、芝居じゃなくて、ただそこにいることが大事と思っていた」というが、忠男に「生まれてくれてありがとう。母ちゃんは幸せだよ」と伝えるシーンでは、「わたしにとって一番大事なシーン」だったことから、「自然に込み上げてくることがあった」と告白。ところが「監督がすごく嫌がる」そうで、加賀は「『今の涙いりません』と結構冷たくて、ムカッとするくらいおっしゃることがあった」とぶっちゃけて笑いを誘うと、「自分の気持ちを落ち着けて普通にやろうとするけどやれなくて、今でも撮り直せるなら撮り直したい」と苦笑した。

 一方で充実ぶりものぞかせる。というのも、当初、和島監督は「ありがとう」というセリフは使いたくなく、「どうやって回りくどく表現すればいいだろうか」と考えていたのだとか。そんな中、加賀の提案により、和島監督は「ちゅうさん(忠男)はいろんな人から疎まれる存在でもあり、胸が締め付けられる場面も多い中で、『ありがとう』は救いの大切な言葉になると同時に、その言葉すらちゅうさんに届いているかわからないという珠子の切なさも表現できる」と思い、「ありがとう」を取り入れることに同意。

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 加賀は「よかったですよね。頑固な監督がやっと納得してくださった」と笑うも、さらなる裏エピソードを披露。実は、和島監督は加賀から提案された後、自閉症の子供を持つ母親に取材し「このシナリオには『ありがとう』という言葉がないんですね」と言われたことで、「(やはり)それが欠けているところだと気づかされた」ようで、加賀は「わたしだと自己満足で言っているみたいに聞こえて心配だったのよね。それもわかるけど、やっぱりあってよかったわね」と微笑んでいた。

 最後に、加賀は「この映画を観た方が、時々街中で自閉症の方に出会ったとき、手を差し伸べてくださらなくてもいいんですけど、微笑んでくれたらいいなぁと、それだけを願っております」と心を込めて呼びかけていた。(錦怜那)

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