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「何食べ」コンビ、50代でさらなる輝き!歳を重ねるのは案外悪くない

西島秀俊&内野聖陽
西島秀俊&内野聖陽 - 写真:杉映貴子

 年輪と経験を積み重ね、50代を迎えてますます輝きを増している俳優の西島秀俊内野聖陽。どんな役を演じても物語に厚みを与える2人が初共演を果たしたのが、よしながふみの人気漫画をテレビドラマ化した「きのう何食べた?」だ。今となっては西島と内野しか考えられない奇跡のキャスティングとなったが、その劇場版となる『劇場版 きのう何食べた?』でオファーを受けた当時の心境を振り返ってもらうと「内野さんだったから」「西島さんだったから」と恋人を演じる相手役の存在が大きな決め手になったと声を揃える。本シリーズに参加したことで役者としても新たな発見や実りがあったという2人が、劇場版までたどり着いた感慨や、年齢を重ねることの良さを語り合った。

【写真】イチャイチャ!西島秀俊&内野聖陽、仲良しショット

「みなさんに応援していただいてここまで来られた」(西島)

『劇場版 きのう何食べた?』より(C) 2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 (C) よしながふみ/講談社

 原作は、青年漫画誌「モーニング」で連載中、累計発行部数840万部(電子版含む)を突破する人気漫画。料理上手で倹約家の弁護士・筧史朗(通称シロさん)と、人当たりのいい美容師・矢吹賢二(通称ケンジ)の日々を、豊かな食卓とともに描く物語だ。2019年4月クールにテレビ東京系列で連続ドラマが放送され、西島と内野の息の合った演技や役へのハマり具合、シロさんとケンジのほろ苦くも優しい日常が視聴者の心をわしづかみにした。

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 そんなシロさんとケンジの関係を揺るがす出来事が巻き起こる『劇場版 きのう何食べた?』が公開中だが、内野は「深夜にひっそりと放送されるものだと思っていたから」と笑いながら、「ここまで来られるなんて思っていなかった。とても感慨深いです」と映画化が叶い感無量の面持ち。西島も「みなさんに応援していただいて、ここまで来られました」と語る。

 西島と内野がカップルを演じるとあって、ドラマ放送前にもSNSを中心に驚きの声が上がった。オファーが舞い込み「ぜひやってみたい」と心を動かされたのはどのようなことだったのだろうか。「もともと原作のファンだった」という西島は、「ものすごく光栄でした。しかもケンジ役は内野さんだということで、これはぜひやりたいと。さらにプロデューサーの瀬戸(麻理子)さん、企画監修の神田(祐介)さんも、純粋にこの原作が好きで集まった人たち。たくさんの方が実写化したいと感じる原作だと思いますので当然プレッシャーもありましたが、このメンバーが集まれば必ずいいものができると思いました」と、スタッフ陣も原作ファンとして信頼のおけるメンバーだったという。

 “乙女”なケンジを演じることになった内野は、「プロデューサーから『内野さんにケンジをやってほしい』と言われて、『俺がやっていいの!?』と盛り上がってしまいました(笑)。これまで自分がやったことのないような役に対しては、非常に闘志がわくもの。役者心をくすぐられました」と新境地にワクワクしたそう。さらに「西島さんがお相手と聞いて、『これはいいなあ!』と思いました」と、西島と顔を見合わせながら楽しそうに話す。

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「役者としての転機になった」(内野)

(C) 2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 (C) よしながふみ/講談社

 撮影がスタートすると、「いい作品ができる」という期待は確信へと変わっていったと、2人共に充実感をにじませる。西島は「こうして内野さんとお話ししているのも、今となっては当たり前になりました」と微笑みつつ、「最初の頃は、みんなでいろいろと試行錯誤をしていました。男性のカップルを描くドラマを作るということでやはり覚悟もいりましたし、どれくらい原作ファンの方に受け入れてもらえるのか、原作を読んでいない方にはどのように受け止められるのだろうか……などスタッフ、キャストもきっとそれぞれがリスクも背負っていたと思います。でも『とにかく丁寧に、まっすぐに作品や役と向き合っていこう』と思いが一致していた。そうやっていけば豊かな作品ができるんだと感じられたことは、いち役者としてもものすごくプラスになったと思っています」と力強く語る。

 すると内野も「“日常にある些細なものを愛しながら、支え合って生きていく”という温かな目線が、スタッフ陣の中にもすごくあるんです」と口火を切り、「スタッフも僕らも原作から影響を受けて、現場には優しい空気が流れていました。そういう空気の中で育ってきた作品」としみじみ。続けて、新境地に飛び込んだことはたくさんの実りをもたらしたと続ける。

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 「役者としては、これまで“オスにしかできない表現”のようなものを大事にして生きてきました。でもケンジを演じる上では、“オスとはこうあるべき”というものはいりません。するとすごく自分自身、自由になれたんです。“西島さんと対峙して生まれてくるものがすべて”と思えた。演技に対しての捉え方も少し変わったと思っていますし、ちょっとおおげさかもしれないけれど、役者としての転機になったと思っています」と喜びを噛み締める。

歳を重ねるのは案外悪くない

 シロさんとケンジを見ていると、大切な人とおいしいご飯を食べながら歳をとっていくということは、何とすばらしいことなのかと実感する人も多いはずだ。西島は現在50歳、内野は53歳。役者として円熟した時期に初共演を果たして最高のコンビネーションを見せた2人だが、彼ら自身も年齢を重ねていくことの良さを味わっているという。

 内野は「50代にもなると、あまり肩肘を張らなくなってくる」と目尻を下げ、「若い頃よりずっと、いろいろな立場から、冷静に物事を見られるようになったと思います。すごく一生懸命にやっている自分がいながら、『もっと力を抜かないとダメだよ』と思っている自分もいる。ある物事に対する答えの出し方が、1ではなく100くらいある感じかな。筋力や体力はどんどん衰えていくけれど、心は豊かに、余裕が持てるようになってくる。歳をとることって、悪くないなあと思っています」と話す。

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 「若い頃は自分のことで手一杯だった」という西島は、「自分がどうするかということばかり考えていましたが、年齢を経ていくと自分のことよりも、周りのことを考えるようになりました。若い役者さんやスタッフさんのことを考えたり、誰かのために動いて『自分のことは、まあいいか』と思ったり」とニッコリ。内野が「本当にそうだよね!」と同調する中、西島は「僕自身、先輩によくしてもらったことがたくさんあって、仕事がないときに手を差し伸べてくれた方もいる。だからこそ自分も、若い人たちのことを考えながら何かを返していければいいなと思っています」と思いやりを継承している様子。「本作も、史朗とケンジが自分たちのことだけではなく、親や周りの人たちのことを深く考えています。年齢を重ねていくって、そういうことなのかもしれません」と語っていた。

 本作は、11月3日より全国299館で封切られ、初日だけで観客動員数12万人、興行収入1.6億円を超える大ヒットスタートを切った。(取材・文:成田おり枝)

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