杉田智和「有名になる」は二の次 ネガティブなイメージを払拭したかったデビュー初期
マーベル・スタジオ最新作『エターナルズ』(全国公開中)の日本版声優を務めた杉田智和がリモートインタビューに応じ、自身が声を当てたヒーロー・キンゴの魅力や、「有名になることは二の次だった」というデビュー初期について語った。
7,000年前に地球に降り立ち、人類の進化を見守ってきた10人の守護者エターナルズの活躍を描く本作。杉田が吹き替えを担当したキンゴ(クメイル・ナンジアニ)は、エターナルズのムードメーカー的存在で、手からコズミック・エネルギーを発射する。
エターナルズが世界中に散らばった後、キンゴはインド映画界(ボリウッド)のスター俳優として生計を立てている。キンゴの第一印象について、「明るく華やかな場にいるボリウッドスターの通り、自分が中心になって周りをパーティーに誘う、明るい盛り上げ役というのが素直な印象です」と明かした杉田は、「吹き替える声優の立場としても、キンゴが明るく自分を迎え入れてくれたので入りやすかったです」とキャラクターの陽気な性格に助けられたと語る。
「エターナルズは何千年も生き続ける仙人のような存在。キンゴはムードメーカー、盛り上げ役、3枚目と言われますが、目立たないように暮らしているエターナルズが多い中で、比較的一般社会に溶け込んで積極的に人類と関わっているキンゴがムードメーカーに見えるんです」と続けた杉田。人類とエターナルズそれぞれの立場に立ち、公平に物事を判断するキンゴの姿に共感したという。
「キンゴは明るいだけではなく、とても公平です。それぞれの立場に立って物事を考えながらも、決して無感情にはならず正論で相手を追い詰めることもしない。たとえ悪とされる存在に対しても、弁護の余地がある場合は良いところを指摘するんです。その辺りは自分もやってきたので共感できますね」。
ボリウッドスターのキンゴは、「有名になりたい」という願望を抱いている。1998年に声優デビューを果たし、今では人気アニメ・映画に引っ張りだこの杉田はデビュー当時、有名になるためではなく「自分の好きなもののネガティブなイメージを払拭したい」という思いで活動していた。
「当時は周囲から『テレビゲームなんて』『アニメなんて』と言われる事が多く、自身が声優を志した時も『なんで声優なんかになるの?』というような扱いで、オタクに対しての風当たりが強かったんです。『自分の好きなものがなぜ悪く言われなきゃいけない?』と思い、テレビゲームやアニメに対するネガティブなイメージを払拭したい、という気持ちがありました。自分が愛するものを悪く言われるのは辛いので……。有名になるのは二の次で、自分の演じるキャラクターや作品がずっと残って欲しいと願っていました。そこに“杉田智和”という名前が残る、残らないは関係ありません。キャラクターが残れば、その結果、私の声や芝居が残るので。自分にとってのコミュニケーションツールであったものがより輝くため、または迫害を受けないためにはどうしたらいいかを突き詰めた結果として、今の自分があります」。
そんな杉田にとって、ヒーローとはどのような存在なのか?「自分の存在や命を投げ打ってでも、誰かのために力を使える人。そういった人はどのような立場であれヒーローと言えるのではないでしょうか」と回答した杉田は、「ヒーローとは自分から名乗るものではなく、誰かから言われる、もしくは後世で名前が残った時に認定されるもの。スタートからヒーローになる人って、あまりいないと思うんですよね。自身の欲望や本能を度外視して、誰かのために自分の存在を賭けられる人こそがヒーローだと思います」と熱く語っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)