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田中みな実「30代半ばで新人」演技挑戦に喜び

田中みな実、映画初主演
田中みな実、映画初主演 - (C) 2021日活

 フリーアナウンサー、モデル、そして女優として活躍する田中みな実が、華やかな都会で生きる現代女性たちを描いた映画『ずっと独身でいるつもり?』(11月19日公開)で、揺れる30代の独身女性役で初主演を務めた。今年は映画2本、ドラマ5本と話題作に立て続けに出演。「新人として、新しい分野に挑戦できる。新しい課題が目の前にある。それ自体がとても喜ばしいこと」と語る彼女が、演技の魅力や、俳優業にかける思いを明かした。

美しい!田中みな実のウエディングドレス姿【写真】

 本作は「女子をこじらせて」の雨宮まみによる同名エッセイを下敷きに、ドラマ「サプリ」のおかざき真理が漫画化したコミックを、現代版にアップデートしたもの。やりがいのある仕事や、好きなものに囲まれた暮らしを送っているにもかかわらず、親からは「独身でかわいそう」と言われてしまうライターの本田まみを中心に、立場も境遇も異なる4人の女性たちが、さまざまな葛藤を経た末に、小さな一歩を踏み出していく。

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 田中が演じた主人公のまみは36歳。結婚の2文字が脳裏にちらつくようになってしまう等身大のキャラクターだ。田中は「喜怒哀楽が激しいキャラクターや、自分とはまったく違う人格の役のほうが、私の場合はやりやすい。感情の起伏もあまり見せない、ふつうの人物を演じるのは、一番難しいことなのではないか」と感じたそうだ。

 完成作を観た田中は、「作品として成立するように編集していただいて、ありがたいと思う反面、自分の芝居にかんしては反省するべき点ばかりでした」とストイックな答えが返ってきた。田中にとっての信念は「ひとつひとつの仕事に嘘がないこと」。だからこそ、自分の仕事を見る目は厳しく、本作に対しても「自分の芝居が追いついていない。でもこの芝居に嘘はないから、わたしの表現できる最大限が、この時点ではここだった」とどこまでも冷静だ。

 本作を手掛けたふくだももこ監督によると、田中みな実の印象は「とにかくプロフェッショナル」。当初の脚本では、田中の実年齢に合わせて、まみを34歳にしていたが、撮影前に会った田中の「原作の36歳という年はすごく大事。この2歳の差は大きいと思う」という意見から、原作どおりの設定になった。実際、まみを30代後半にしたことで、彼女の不安や焦燥感が、より切実なものとなって迫ってくる効果が生まれた。

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 田中と言えば、ドラマ「絶対正義」(2019)を皮切りに、「M 愛すべき人がいて」(2020)、「生きるとか死ぬとか父親とか」(2021)、放送中の「最愛」に出演するなど女優としての活躍が目覚ましいが、最近になって、ようやく「一緒につくりあげているという感覚が得られるようになった」と明かす。

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稲葉友にバックハグされる田中みな実 - (C) 2021日活

 「今までは、まだ経験も浅いわたしが意見するなんて、と気後れしていたところがあったんです。でも、同じ土俵にいる以上、変に気を遣っていても、なかなか作品の一部になれないんじゃないか、自ら隔たりをつくってしまっているのでは……と思って。今のドラマの現場では、わからないことや、自分の意見をきちんと監督に伝えて、話し合いながら、お芝居に取り組んでいます」と考え方にも変化があった。

 「芝居については、まだつらさも、おもしろさも十分にわかっていないような状態」だが、あえて言うならば、「まもなく35歳になるタイミングで、わからないことにであえるのは、有意義なこと。できないことが多い、ということに魅力を感じている」という。「ふつうに勤めていたら、もう中堅とか、ベテランの域に入ってくる年代。そんななかで、新人として、新しい分野に挑戦できる。新しい課題が目の前にある。それ自体が、とても喜ばしいことだと思いますし、今とても貴重な体験をさせてもらっていると感じています」

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 新しいことにチャレンジする喜びのなかで、客観的な視点も持ち合わせる。「30代半ばで新人というのが、世の中的にどう見られるのか。しかも、アナウンサーというか、タレントとしては、ある程度キャリアがある人間なので。見ていられない、と思う人もいるかもしれないし、こんな状態で主演なんて、という意見も覚悟しています」と穏やかな口調からは、焦る様子はない。「さまざまな意見を持たれる方がいて当然です。それでも、ずっと興味を持ってもらえる対象であり続けることができたら、わたしは幸せです」と年齢や世間の枠にとらわれず、挑戦を恐れれず新天地を着実に切り拓いている。

 そして、20代半ばのころとは「なにもかもが変わった」と振り返る田中。「負けん気が強い性格は変わらないんですけど(笑)。まず環境や立場が大きく変わりました。あとは、プライベートでも仕事でも、あらゆる面において経験を重ねました。この10年、振り返ればつらいこともありましたが、そういうことも経験しておかないと、そういう人の立場になって考えることができませんし。ましてや今、俳優という仕事をやらせていただくうえでは、表現の幅も圧倒的に広がると思うので」とムダな経験はひとつもない、というのが素直な気持ちだ。

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 本作では、東京で一人暮らしをするまみと、独身の娘を案じる故郷の母親との関係も共感度たっぷりに描かれている。一方、田中自身の両親は「子どものころから、すごく自主性を大切にしてくれる存在」だった。「3人姉弟ですが、比べられることもなく、それぞれがやりたいことの背中を押してくれる両親でした」アナウンサーを目指したとき、フリーになるとき、いつも両親の現実的なアドバイスや、優しい励ましに支えられてきた。

 女優業をしている現在は、家族LINEに両親から「これ観たよ」というメッセージがよく届く。「多くは父と母からで、姉弟は、なんとなくスタンプとかで返してくれる感じ(笑)。ものすごく応援されても、プレッシャーに感じるだろうし、ほどよく『観たよ』っていうくらいのスタンスでいてくれるのが、わたしはとっても心地いいんです(笑)」と感謝していた。(取材・文:石塚圭子)

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